アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、症状が慢性的に続く皮膚疾患です。近年では大人になってから再発、発症することも増えています。
アトピー性皮膚炎の一覧
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、アレルギーにより皮膚にかゆみを伴う湿疹が現れる皮膚疾患です。
症状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、また慢性的に続くことが多いという特徴があります。
国内でアレルギーに悩む方の数は増加傾向にあります。
特にアトピー性皮膚炎の患者数は、2014年の段階で過去最高の約45万人にまで上ると言われています。
またかつては幼少時に発症することが多く、年を重ねる内に治ることも多い病気でした。
しかし近年の世代別のデータでは30~50代の患者数も増えており年をとってから再発、あるいは発症してしまう患者さんも増えています。
アトピー性皮膚炎は命に関わる病気ではないものの、かゆみや湿疹が大きなストレスとなって患者さんが心の不調を感じてしまうこともあります。
ステロイド薬を始めとしたアトピー性皮膚炎治療薬や、セルフケアなどを交えて症状を抑えていくことが大切です。
アトピー性皮膚炎の治療方法
アトピー性皮膚炎の治療は、3つの柱で進めていきます。
- 薬物療法
- スキンケア
- 悪化要因の除去
以下では、それぞれの方法について解説します。
薬物療法
アトピー性皮膚炎の治療の基本となるのが、薬物療法です。
症状を完治させることはできませんが、かゆみや湿疹を抑えて更なる悪化を防ぐためにも薬を使うことは大切です。
主にアトピー性皮膚炎治療薬として用いられるのは、「ステロイドの外用薬」と「免疫抑制剤」です。
ステロイドの外用薬は種類によって効果の強さが異なり、患者さんの年齢・重症度・症状が起きている部位などに応じて使い分けられます。
また免疫抑制剤はステロイド薬とは違った効果を持つ薬です。
ステロイド薬を使用した時に起こりやすい、皮膚が薄くなるなどの副作用が現れにくいので顔や首などに用いられます。
国内ではプロトピック軟膏のような免疫抑制剤がアトピー性皮膚炎の治療に使用されています。
その他、補助薬としてアレグラなどの抗アレルギー薬を一緒に服用することもあります。
スキンケア
アトピー性皮膚炎の発症や悪化の原因には、皮膚のバリア機能の低下も関わっています。
そのため薬物療法だけでなく、肌の保湿や紫外線対策をしっかりと行って肌を守ることも重要になります。
スキンケア用品は低刺激性のものを選び、また外出の前後や入浴後などこまめに使うと効果的です。
またスキンケアを行うだけでなく、肌を清潔な状態に保つことも大切です。
この時も肌への刺激を避けるために、ボディソープや石鹸をよく泡立てて優しく洗いましょう。
悪化要因の除去
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、薬物療法とスキンケアです。
しかしそれだけで症状がコントロールできない場合は、身の回りにあるアレルゲンやストレスなどの悪化要因をできるだけ取り除くことも必要です。
- 1日1回は掃除機をかける
- 換気をまめに行う
- シーツや枕カバーを洗濯する
- 睡眠や休養をしっかりと取り、ストレスを溜めすぎない
など
またアトピー性皮膚炎は一度症状が良くなったと思っても、その後再び悪化することもあります。
そのため日頃から予防を心がけた生活を送るようにしましょう。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎には、次のような皮膚症状が見られます。
- 赤みがかった湿疹
- プツプツとした、ドーム状に盛り上がっている湿疹
- ジクジクとただれた状態
- 掻くことにより皮膚がゴワゴワと厚くなったり、カサブタができる
- フケのようなものが落ちる
など
これらの症状は年齢や個人により違いはありますが、顔や耳、首周り、脇の下や関節(ヒジ・ヒザ)の内側など様々な部位に現れます。
さらに症状の現れ方により、アトピー性皮膚炎の重症度が次のような基準で判断されます。
軽微:湿疹などがほとんど無く、肌のカサつきが見られる程度
軽症:皮膚の感想や赤みがかった湿疹が現れ、皮膚からフケが落ちる場合
中等症:中等度の腫れやフケ、ブツブツがあり、かゆみが強くなる場合
重症:症状が広範囲に現れて出血を伴う、ぶつぶつやフケの悪化、皮膚のただれや水ぶくれ、カサブタなどがある場合
こうした重症度は治療方法を決めるための目安となります。
またアトピー性皮膚炎は症状そのものが患者さんの大きなストレスとなり、治療も長期化してしまうため精神的な負担も少なくありません。
かゆみのために寝付けなくなり睡眠障害を合併することもありますが、もしも"早朝に目が覚めてしまう"などの早朝覚醒が現れている場合は抑うつ状態に陥っている可能性もあるので注意が必要です。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎は、「体質的な要因」と「環境的な要因」が重なり合うことで発症、あるいは悪化してしまいます。
また人によって何が原因となるかは異なり、さらにその時のからだや心の調子の影響を受けることもあります。
体質的な要因
体質的な要因には、主に2種類があります。
アトピー素因
日本皮膚科学会によると、アトピー性皮膚炎は次のように定義づけられています。
- 良くなったり悪くなったりを繰り返し、かゆみを伴う湿疹が現れる皮膚疾患
- 患者さんの多くはアトピー素因を持っている
ここで現れた「アトピー素因」とは、簡単に言うとアレルギーを起こしやすい体質のことです。
アトピー素因には、2つの条件があります。
①本人や家族が、アレルギー性鼻炎・結膜炎や喘息などのアレルギー症状を持っている
②アレルギー反応の原因物質「IgE抗体」を作りやすい体質
ただし、アトピー素因を持っているからといって必ずしもアトピー性皮膚炎を発症する訳ではありません。
皮膚のバリア機能
人の皮膚には体内から水分がもれてしまったり、外部から異物が侵入することを防ぐために「バリア機能」が備わっています。
しかしアトピー性皮膚炎の患者さんは乾燥肌であることが多く、皮膚のバリア機能が低下している状態です。
そのためアレルゲンや雑菌が侵入しやすく、また外からの刺激にも弱くなるためかゆみが現れやすくなります。
そして皮膚を掻くことでさらにバリア機能が低下、症状もますます悪化してしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
バリア機能の低下 → 外からの刺激 → かゆみが現れ、皮膚を掻く → バリア機能の低下 …
環境的な要因
環境的な要因としては「アレルゲン」と「非アレルゲン」に分かれます。
アレルゲン
アトピー性皮膚炎は例えばダニやホコリ、あるいは食べ物などアレルゲンとの接触によって症状が現れてしまいます。
何にアレルギーを持っているかは人それぞれ異なりますが、血液検査や皮膚検査などで調べることが可能です。
非アレルゲン
アトピー性皮膚炎の発症や悪化に関わるのは、アレルゲンや体質だけではありません。
次のような要因が引き金となることもあります。
- 皮膚を掻くことや、汗による刺激
- 皮膚の乾燥
- 洗剤や化粧品
- 睡眠不足や疲れ、ストレス
など
生活習慣や、いつも使っている日用品を見直すこともアトピー性皮膚炎の予防に繋がるはずです。