痛風とは
痛風とは、尿酸がからだの中にたまってしまうことで起こる病気です。
尿酸がかたまり結晶となることで、激しい痛みがある関節炎を起こすようになります。
今ではザイロリックなどの痛風治療薬があるので、正しい治療を行うことで支障なく健康な生活を送ることができます。
しかし、生活習慣が影響するので治療の一貫として"食事"を見直すことも治療の1つとなります。
放置してしまうと関節の痛みは悪化するばかりでなく、からだ中のあちこちに結節ができたり、腎臓のはたらきが悪くなり重大な合併症を引き起こすこともあります。
痛風が発症する前は血液内の「尿酸値」が高い状態が続いてしまいます。
これが「高尿酸血症」と呼ばれる状態です。
ちなみに高尿酸血症の状態での自覚症状はほとんどないと言われています。
尿酸値が高い状態を放置すると、気付いた時には関節炎を起こし痛風を発症します。
「風に当たるだけでも痛い」と表現されるほどで、その痛みは強烈です。
この痛みは継続する訳ではなく、発作的に起こることから"痛風発作"と呼ばれています。
たいていの場合には7~10日間ほどで痛みは治まり、しばらくは無症状が続きます。
そこから1年以内に再び痛風発作が起こり、これを繰り返しているうちにさまざまな部位に腫れが起こり、発作の感覚も短くなっていきます。
最後には慢性痛風になる可能性も高くなることから、日頃の生活習慣を見直すことがならないための予防の1つと言えます。
痛風の治療方法
痛風の根本的な原因である高尿酸血症を改善する方法には、次の2つがあります。
どちらか一方だけ行えば良いという訳ではなく、どちらも並行していくことが大切です。
薬による治療
薬による治療方法は、さらに2つにわけることができます。
尿酸が結晶化し何らかの拍子にはがれ落ちることで激痛を伴う痛風発作は起きます。
そこで発作を予防する薬であるコルヒチン、あるいは痛みを抑える薬であるNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの解熱鎮痛剤を使用します。
痛風発作の前兆があればコルヒチン、既に発作が起きたら解熱鎮痛剤と使い分けるようにして下さい。
また痛風の発作が治まった後に必要になるのが、尿酸値を下げる作用があるザイロリックや尿酸の排泄を促進するベネシッドなどを使います。
痛みがなくなれば痛風が治ったようにも思えますが、尿酸値が高い状態は改善されません。
尿酸を下げたり、排泄することで高尿酸血症を改善し痛風の治癒を目指します。
食事療法
尿酸は食事と深い関わりがあるので、次のことに気をつけてみて下さい。
- 肥満の解消
- 栄養のバランスを管理する
- 1日3食を規則正しく食べる
- プリン体が多い食品は控える
- 尿酸の排泄を促進するために、水を1日2リットル以上飲む
- アルコールは控える
- 塩分を控えめにする
乱れた食生活を改善するのは大変なことですが、痛風を治療するために薬の服用と並行して食事療法を取り入れて下さい。
数値でみる痛風
30~40代の男性のおよそ30%が"高尿酸血症"
メタボリックシンドローム(メタボ)のおよそ37%が痛風患者さん
尿酸値が9%台だと、尿酸値6%未満の人に比べて5年での痛風発症率は40倍
尿酸値が10%以上だと、尿酸値6%未満の人に比べて5年での痛風発症率は60倍
尿酸値の「%」についてですが、痛風あるいは高尿酸血症の人には「6・7・8ルール」というものがあります。
この「6・7・8ルール」というのは、痛風あるいは高尿酸血症の治療目安となる尿酸値です。
6~7 ・・・ 正常の範囲
7を超える ・・・ 高尿酸血症
8以上 ・・・ 薬による治療が必要
このように数値でわけることで、検査した時の尿酸値によっては治療が必要となります。
~女性に少ない痛風~
痛風を発症する割合を男女別にみると、その90%は男性となっています。
これだけ男性ばかりが発症すると、男性の病気といっても過言ではありません。
しかしなぜ女性が発症する割合が低いのでしょうか。
この理由ははっきりしています。
「尿酸の血中濃度が女性の方が低い」からです。
血清尿酸値(尿酸の血中濃度)が7を超える状態が続くことで高尿酸血症となりますが、この"7"に到達するまでが男性と女性とでは大きくことなります。
男性 ・・・ 尿酸値が1.5mg/ml上昇
女性 ・・・ 尿酸値が3mg/ml上昇
男性と女性とでは2倍も違うので、女性の場合は高尿酸血症にも痛風にもなりにくいです。
しかも女性ホルモンには腎臓から尿酸の排泄を促すはたらきがあるので、なお女性は発症しにくいです。
しかし女性も閉経を迎えることで、女性ホルモンが低下すると男女の差は少なくなると言われています。
また遺伝や薬の副作用など、特殊な事情によって女性が閉経期前に痛風になることはあるので注意が必要です。
痛風発作の原因
痛風発作の原因となるのは、次の2つになります。
①尿酸
②白血球
この2つの物質のはたらきが関節に激痛をもたらします。
健康な人のからだの中では600~700mg/1日の尿酸がつくられています。
またこの尿酸は腎臓からほぼおなじ量が排泄されているので、からだの中の尿酸の量は一定に保たれています。
しかし尿酸が多くつくられる状態となればバランスが崩れてしまい、からだの中にあまった尿酸は蓄積されていきます。
余った尿酸が次第に結晶化していくことで、関節に沈着していき、ある日突然、はがれてしまいます。
すると、からだの免疫機能をつかさどる"白血球"がこれを外部から侵入した異物だとみなしてしまい攻撃しに集まってきます。
その攻撃によって炎症が起こり「痛風発作」になり、激しい痛みにみまわれます。
尿酸値を上げてしまう原因
かつて痛風は「贅沢(ぜいたく病)」とも呼ばれ、そのことからわかるようにカロリーの高いあるいは偏った栄養バランスの食事を続けることで尿酸値は高まります。
このことから尿酸値を上げてしまう原因には、次のようなことがあります。
肥満
尿酸値の高い人の大半は肥満です。
大食い・早食い、高カロリーな食事といったものはすべて肥満の原因となり尿酸値を高めてしまいます。
ここで重要なのが「プリン体」の存在です。
プリン体はからだの中で分解されることで尿酸へと変化します。
つまり、プリン体の多い食事は尿酸値を高める結果を招いてしまいます。
レバーや魚卵(いくらなど)、干物などには特に多く含まれているので摂り過ぎには注意が必要です。
1つの食品に対して「どれくらいのプリン体が入っていると多いのか」の目安は、次のようになっています。
300mg以上 ・・・ 極めて多い
200~300mg ・・・ 多い
50~100mg ・・・ 少ない
50mg以下 ・・・ 極めて少ない
また痛風や高尿酸血症の治療ガイドラインの食事療法の中には、「1日のプリン体摂取目安が400mg」とされています。
現に治療をしている人はもちろん、予防のためにもこのプリン体の含有量を1つの参考としてみてください。
アルコール
尿酸値を上げる飲料として悪者扱いされるのビールですが、ビールにかぎらずからだの中に入ったアルコールは代謝によって尿酸を合成します。
しかもアルコールには尿酸の排泄を低下させる作用もあるので尿酸値を高める原因になります。
ストレス
ストレスは人の自律神経や免疫機能、ホルモンバランスなどの乱れなどを起こします。
すると、腎臓から尿酸が排泄されにくい状態となり、尿酸値は高まります。
またストレスが原因で"暴飲暴食"をすると、肥満と同じように尿酸値を高めてしまいます。
激しい運動
激しい運動をすると、乳酸という疲労物質がからだの中にたまります。
乳酸は尿酸の排泄機能を低下させるので、結果として尿酸が蓄積されてしまいます。
この他にも"遺伝"や、腎臓病や高血圧の治療薬の"副作用"などが尿酸値を高める原因と考えられています。
痛風の初期症状
痛風の前触れでもある初期症状は、次のようなことがあります。
→膝や足の指(親指)に痛みや熱感がある
→膝関節に炎症
→足の指が変形
→立ち上がる時に痛みがある
→長時間に渡って痛みが続くものの、気付いた時には治まる
こういった前触れを自覚している人は、内科で検査を受けることをオススメします。
早期発見によって軽い症状で治療できることもあるので、悪化する前に治療するようにしましょう。
痛風の合併症
痛風は激しい痛みの発作に加えて、悪化すれば関節の周りに結節ができ「痛風結節」となることや腎臓にたまった結晶の影響から「慢性腎臓病」や「尿路結石」となることがあります。
またこんなデータもあります。
「痛風患者さんの合併症保有率96%」
痛風は"動脈硬化"を加速させたり、それと同時に"高血圧"や"虚血性心疾患"、"脳血管障害"などを起こしやすくします。
このデータから考えれば痛風患者さんの中で合併症がない人は、わずか4%にすぎないということです。
痛風患者さんの合併症による死亡率はここ20年では「腎不全」が40%ちかくを占めていました。
しかし最近では、虚血性心疾患や脳血管障害がもっとも多いとされています。
命の危険に関わる病気を合併させないためにも早めの痛風治療を心がけるようにしましょう。
~痛風の歴史~
痛風の歴史はとても古いと考えられています。
それを証明するものとして、エジプトで発掘されたミイラの関節に尿酸塩をみつけたとの報告が上がっています。
また紀元前では、医学の父であるヒポクラテスが痛風を報告しています。
西洋史の中で痛風に苦しめられた著名な人は多いとされています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
ダンテ(詩人)
ゲーテ(文豪)
ニュートン
ダーウィン
この他にも歴史に名を残した人が多くの人が痛風に苦しんでいたそうです。
一方の日本では明治以前までは痛風は確認に苦しめられた人は確認されていなかったようです。
さかのぼること"安土桃山時代"では、ポルトガルの宣教師であったルイス・フロイスが日本人には痛風がないと記録しています。
また明治初期では、ドイツの医師ベルツが「日本に痛風はない」と記録しています。
しかし、1960年代から患者数が増え、現在では全国に数十万人が痛風だと言われています。
余談となりますが、恐竜がいた白亜紀ではティラノサウルスが痛風だったという報告もあります。
化石から尿酸塩に侵食された跡がみられるようです。
肉食の恐竜として知られるティラノサウルスですが、これは人も同じでお肉ばかりの生活はいずれ痛風になる可能性を高めてしまうので注意が必要です。