喘息(発作)
喘息は気管支に慢性的に炎症が続く病気です。呼吸困難など命に関わることもあり吸入器など喘息薬で適切な治療が必要となります。
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喘息とは
喘息とは、気道(特に気管支)が常に炎症を起こしている状態をいいます。
気道は平滑筋(へいかつきん)という筋肉で囲まれ、粘膜で覆われており、からだに空気を送りこむにはかかせない部分です。
しかし、喘息の場合は粘膜が何らかの原因で常に炎症を起こしており、敏感な状態になっています。
そこにさまざまな物質が刺激となって粘膜が反応してしまうと、粘膜がむくみ、筋肉が縮み、気道を狭くします。
そして咳きや痰、喘鳴(ぜんめい)、息苦しいなどの症状があらわれます。
これらの症状があわられることを「発作」と呼びます。
発作の頻度が増すと、その度に粘膜が傷ついてさらに敏感になり、発作を起こしやすくなります。
治療せずに放置し続けると、難治化し、日常生活が困難になります。
喘息は治療をすれば、慢性的な炎症を抑えて発作を防ぐことができるため、できるだけ早く治療にあたりましょう。
喘息の治療
喘息の治療では「発作を防ぐために毎日行う治療」と「発作が起きたときに行う治療」の2つを行います。
喘息患者さんの気道は常に炎症を起こしており、ちょっとした刺激にも過敏に反応してしまいます。
発作の頻度が増すと状態は悪化してしまうため、喘息治療薬を使って未然に発作を防ぐことが改善へのカギです。
発作を防ぐために毎日行う治療
基本的な治療薬として、アドエアなどの「吸入ステロイド薬」があります。
慢性的な気道の炎症を抑える効果があり、最近ではこの吸入ステロイド薬と気道を広げて呼吸を楽にする「長時間作用性β2刺激薬」を一緒に吸入できる薬もあります。
発作が起きたときに行う治療
気管支を広げるサルブタモールなどの「短時間作用性吸入β2刺激薬」が使用されます。
この薬は気管支を広げる作用が強く、速効性があるため、発作時にすぐに呼吸を楽にしてくれます。
もし、薬を使用しても発作が収まらなかったり、重度の発作の場合は救急外来を受診してください。
喘息は、1、2ヶ月で治る病気ではなく、必ず完治する病気ではありません。
一度かかると、一生つきあわなければならないケースも多くあります。
しかし、適切な治療を行えば、発作を防いだり、薬を止めて家庭で経過をみる状況まで回復することもできます。
健康な人と同じように生活を送るために、根気強く治療を続けることが必要です。
喘息の症状
喘息の症状(発作)は、咳や痰、呼吸するときに「ゼェゼェ」「ヒューヒュー」と鳴る喘鳴、息苦しいなどの症状があらわれます。
症状が重い場合は、苦しくて会話ができなくなる、歩けなくなるという症状やチアノーゼ(唇と爪が青くなる)になったり、呼吸困難に陥ることがあります。
喘息の発作が起こりやすい傾向には次のような特徴があります。
- 夜間~早朝にかけての時間
- 季節の変わりめ
- 天気や気温の激しい変動
- 疲れているときや体調が優れないとき
- 発作を引き起こす刺激に触れたとき
特に夜間~早朝にかけて発作が起こりやすいため、喘息患者の多くは睡眠妨害に悩まされます。
喘息の原因
喘息の原因は1つではなく、さまざまな刺激が原因で発作が引き起こされます。
原因となるものとして、ダニやホコリなどによってアレルギー反応を起こす「アレルゲン」とタバコの煙や排気ガスなどの「非アレルゲン」の2つに大きく分けられます。
アレルゲンとは、体内の抗体が特異的に反応し、排除しようとさせる物質です。
この抗体の働きにより、アレルゲンを体内から外に吐き出そうとするため、咳き込みなどの反応が起きてしまうのです。
アレルゲン
アレルゲンが刺激となってアレルギー反応を起こし、発作が起こります。
小児喘息は、主にアレルゲンが原因になります。
アレルゲンはこのようなものがあります。
- ダニ
- ハウスダスト
- 犬、猫(毛やフケ)
- 花粉
- 真菌(カビ)
- 卵白、牛乳などの食べもの
ダニやハウスダストは特に身近なアレルゲンだと思います。
毎日こまめに掃除をし、家を清潔に保ちましょう。
またアレルゲンが原因の喘息は、「季節性がある」ことと、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎と「合併症を起こしやすい」といった特徴があります。
喘息は薬で治療することももちろん大事ですが、発作の原因となるものを遠ざけること、減らすことが改善のポイントです。
1.ヤケヒョウダニ
もっとも普遍的にどんな場所にも見られるダニです。
寝具やカーペットなどのフケや垢などが溜まりやすい場所や、動物や人間の皮膚からも発見されます。
2.ハウスダスト
部屋に溜まる埃のことです。
3.猫や犬のフケ
フケは皮膚が剥がれ落ちたものです。
人間と同じように冬場は乾燥するため特に多くなります。
4.アルテルナリア(カビ)
5.カンジタ(カビ)
他には牛乳や卵白、小麦などの食べものがランキングに入っています。
非アレルゲン
喘息は、気道が過剰に敏感になっているため、アレルゲン以外の刺激でも発作を引き起こすことがあります。
成人喘息の原因のほとんどが、この非アレルゲンといわれています。
- タバコ、排気ガスの煙
- 薬
- 風邪、感染症
- 疲労、ストレス
- 運動
- 天気や気圧の変化
非アレルゲンが原因の喘息は、あらゆる刺激が原因となって発作を引き起こします。
「季節性がなく」、「冬場に悪化する」ことが多いのが特徴です。
大人になるにつれてタバコや排気ガスに触れる機会や、ストレスの多い環境にいることが多くなると思います。
原因を遠ざけたり、ストレスを発散することや上手につきあうことが重要です。
喘息と似ている病気
咳や痰、息苦しさなどの症状が出るのは喘息だけではありません。
喘息と間違えて、病状の悪化や不適切な治療をしないために知っておく必要があります。
咳喘息
痰や、喘息特有の喘鳴や呼吸困難はなく、咳だけが続く病気です。
アトピー咳嗽(がいそう)
症状は咳喘息と同じように咳だけが続きます。
しかし咳喘息とは違い、気管支拡張剤が効きません。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
気道の炎症や肺胞が破壊されることで、呼吸が十分にできなくなる病気です。
安静時にも発作が起こる喘息とは違い、COPDは運動したときに息苦しくなります。
主な原因は喫煙と考えられており、それによる慢性気管支炎や肺気腫がCOPDにあてはまります。
百日咳(ひゃくにちせき)
百日咳菌に感染することで、激しい咳が1ヶ月以上続きます。
治療には抗菌薬が使われ、乳幼児には3種混合ワクチンの予防接種が行われます。
感染後咳嗽
風邪をひいたあとに咳だけが残ってしまうことです。
自然に治るのを待つか、咳止め薬を使って治します。
喘息の患者数
現在の日本においての喘息患者数は、大人では人口のおよそ3~4%、子供は6~8%といわれており、近年増加の傾向にあります。
これは世界共通の動向で、医療界ではたいへん問題視されています。
喘息患者を年齢別にみると、1~9歳頃までの小児期がもっとも多く、これを「小児喘息」といいます。
小児喘息は、気管支を含め、からだ全体が発達することで思春期を迎える前には治ることがほとんどです。
しかし治らずに大人になっても続く、「成人喘息」の患者は小児喘息の20%いるとされており、油断はできません。
子供のうちに自然に治るといっても、治療なしで治ることはまず無いということは覚えておく必要があります。
成人喘息は小児喘息から移行した患者だけでなく、今まで健康だった人が突然喘息になるというケースもあります。
成人喘息のうち、40歳を過ぎてから発症する患者が半数以上いるといわれています。
まさか成人してから突然に喘息になるとは思いもしない人が多いでしょう。
また風邪と症状が似ていることため、治療が遅れて難治化してしまうことが少なくないようです。
喘息は子供の病気というイメージですが、大人でもかかる可能性があることを知っておく必要があります。
●羽生結弦(はにゅう ゆづる) フィギュアスケート選手
フィギュアスケート界のリビングレジェンドともいえる、数々の偉業を成し遂げた羽生選手。
世界最高記録の保持者であり、2017年の世界選手権では世界歴代最高得点をたたき出し、自身の記録を自ら塗り替えました。
しかし、そんな羽生選手は2歳頃から喘息を患っており、今も病気と闘い続けています。
そもそもフィギュアスケートを始めたきっかけも、喘息の原因の1つである埃に触れる機会が少ない且つ、からだを鍛えられるスポーツだったからだそうです。
羽生選手のケースは「小児喘息から移行した成人喘息」が当てはまります。
子供の頃よりは症状が軽くなったものの、演技中に発作を起こすこともあり、今でも治療を続けています。
●吉田沙保里(よしだ さおり) 女子レスリング選手
吉田選手は、個人で世界大会16連覇、個人戦206連勝という記録を持ち、異名「霊長類最強女子」と呼ばれています。
2012年にはギネス世界記録認定、国民栄誉賞を受賞しました。
しかし、世界大会13連覇達成後、咳が止まらない、息があがりやすいなどという症状が出始めました。
症状は日に日に悪化し、ついに病院で喘息と診断されましたが、吉田選手は今まで喘息にかかったことはありませんでした。
羽生選手とは異なるケースの「大人になってから突然喘息になる成人喘息」が当てはまります。
吉田選手も治療を続けながら競技を続けています。