抗うつ剤
抗うつ剤は、うつ病を治療するためのお薬です。三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSAの5種類に分類され、ご自分に合っているものを選ぶのが大切になります。
抗うつ剤の一覧
抗うつ剤とは
抗うつ剤とは、うつ病や不安障害などの精神疾患に用いられる薬になります。
一口に抗うつ剤といっても、その種類はさまざまあります。
また他の薬と違い、服用したから直ぐにうつ病などが治るという訳にもいきません。
抗うつ剤は、次の5つの系統に分けることができます。
- 三環系
- 四環系
- SSRI
- SNRI
- NaSSA
これら1つの系統の中にさらにいくつもの種類があり、それぞれ異なる特徴をもっています。
抗うつ剤は長く付き合う薬になるので、自分にあった薬選びが必要になります。
三環系抗うつ剤の特徴
三環系抗うつ剤は作用が強力なものの、副作用も多いのが特徴となっています。
強い抗うつ効果を期待することができますがその反面、副作用が多くなるという両刃の剣のような特徴があります。
一番はじめに登場した抗うつ剤の系統でもあり、1950年ごろからうつ病の治療に用いられています。
副作用が強いことから重い副作用が現れてしまうこともあり、他4つの抗うつ剤で効果が認められない場合や難治例に限って用いられます。
三環系抗うつ剤の種類
三環系の抗うつ剤には、次のような薬があります。
■アナフラニール
セロトニンに強く作用することからうつ病以外にも、強迫性障害や不安・焦燥といった症状にも効果的
■トリプタノール
鎮静効果が強い薬になり焦燥感が強い方に効果的で夜尿症にも用いられる
■トフラニール
三環系の中でもオーソドックスな薬
■アモキサン
即効性がある反面効き目・切れが早くドーパミンを抑える作用があることから、幻覚や幻聴を伴ううつ病にも効果的
三環系は抗うつ以外の効果も期待できることがあり、不安や焦燥が強く現れている方にも有効となります。
三環系抗うつ剤の作用
三環系の抗うつ剤には、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど人の気分に関係するモノアミンの再取り込みを阻害する作用があります。
再取り込みを阻害というのは言い換えれば、吸収や分解を防ぐことになります。
モノアミンの吸収や分解を抑えることによって、脳内でのモノアミンの量を増やすことができます。
モノアミンが増えることで、うつ病の症状を改善することができます。
三環系の薬は古くから用いられている薬になるため、作りが荒いです。
作用が強いものの、抗コリン作用(口の渇き/便秘/尿閉)、EDなどの性機能障害などを起こします。
頻度が低いものの、不整脈を誘発してしまうこともあります。
また用法用量を守らず大量に服用した場合には命の危険もあるので、服用量などの管理は慎重に行うようにして下さい。
四環系抗うつ剤の特徴
四環系抗うつ剤は抗うつ効果が弱く、眠りを深くする作用に優れるというのが特徴になります。
三環系は副作用が多かったため、もう少し安全性の高い抗うつ剤ということで登場したのが四環系の抗うつ剤になります。
また三環系は抗うつ効果が現れるまでに2週間ほどかかりましたが、四環系は1週間ほどで効果を発揮することもあります。
副作用を少なく抑え、即効性を改善した薬が四環系抗うつ剤になります。
しかし、抗うつ効果が弱いせいかそこまで普及することはありませんでしたが、眠気を誘発する作用に優れていることから不眠症が強いタイプのうつ病の方に用いられることが多いです。
四環系抗うつ剤の種類
四環系の抗うつ剤には、次のような薬があります。
■ルジオミール
三環系抗うつ剤にくらべ抗コリン作用(口の渇き/便秘/尿閉)を少なく抑えることができる
■テトラミド
ヒスタミンという物質をブロックする作用が強いことから強く眠気を生じさせる
■テシプール
テトラミドには少し劣るものの抗ヒスタミン作用によって眠気を生じやすくさせる
四環系の抗うつ剤は、うつ病治療の第一選択薬とされることは少ないですが、不眠のあるうつ病の方にお勧めできる薬になります。
四環系抗うつ剤の作用
四環系抗うつ剤は三環系と同じように、モノアミンなどの吸収や分解を防ぐ作用によって、抗うつ効果を期待することができます。
またモノアミンの中でもノルアドレナリンを優位に増やすと言われています。
SSRI系抗うつ剤
SSRI系抗うつ剤は抗うつ効果もありつつ、副作用が少ないというのが特徴の薬です。
脳内のさまざまな部位に作用する三環系などに比べモノアミンだけに作用し、抗うつ効果がありながら副作用も少ないバランスの良いタイプとされています。
効果と副作用のバランスの良さから、うつ病治療の第一選択となっています。
SSRI系抗うつ剤の種類
SSRI系の抗うつ剤には、次のような薬があります。
■ジェイゾロフト
作用時間が非常に長いことから1日1回の服用で済み、パニック障害やPTSDなどにも効果的
■パキシル
SSRIの中では効果が強いものの副作用も多い
■レクサプロ
作用時間が長いことに加え半減期(薬の効果が半分になる時間)が長いので離脱症状を起こしにくい
■プロザック
日本では未承認の抗うつ剤で海外通販などでのみ購入が可能
同じSSRI系の抗うつ剤でも作用時間や効果の強さ、副作用なども異なります。
自分の症状に合わせた抗うつ剤選びが大切になります。
SSRI系抗うつ剤のジェネリック医薬品
SSRI系抗うつ剤にはジェネリック医薬品があります。
海外通販(個人輸入代行)で購入することができ、通院しなくとも薬を常備しておくことができます。
先発薬(成分) | ジェネリック医薬品(成分) |
---|---|
ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン) | セルティマ(塩酸セルトラリン) |
パキシル(パロキセチン塩酸塩) | パロキセチン(パロキセチン塩酸塩) |
レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩) | エシスシタデップ/シタロプラム/エスケート(エスシタロプラムシュウ酸塩) |
プロザック(フルオキセチン) | フルニル/オキセチン(フルオキセチン) |
先発薬とジェネリック医薬品は同一成分を含んでいます。
用量も変わることがないので、先発薬と同じように服用することで抗うつ効果を期待することができます。
SSRI系抗うつ剤の作用
SSRIは人の気分に関わるモノアミンの中でも、セロトニンにのみ選択的に作用します。
「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」とも呼ばれ、セロトニン以外にあまり作用させないことで副作用を大幅に軽減することができています。
人の神経と神経の間をシナプス間隙(神経間隙とも)と呼び、SSRIが神経との間でセロトニンが再吸収、分解されないように阻害することでセロトニン量を増やすことができます。
セロトニン量が増えていくことによって、うつ病の症状である意欲低下や憂鬱な気分を改善することができます。
SNRI系抗うつ剤
SNRI系抗うつ剤は効果と副作用のバランスが良く、意欲低下や痛みが強い場合に有効という特徴をもっています。
SNRIとは選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤になります。
セロトニンが不安や気持ちの落ち込み、ノルアドレナリンが意欲や心因性の痛みに関係しているとされています。
2つの物質に作用することから、単純計算ですがSSRIよりも1つ多くの効果を期待できるとも言えます。
効果と副作用のバランスも良いことからSSRI系抗うつ剤と並んで、うつ病治療薬の第一選択となっています。
SNRI系抗うつ剤の種類
SNRI系抗うつ剤には、次のような種類があります。
■イフェクサー
うつ病の身体的症状である頭痛・腰痛・肩こりなどの痛みにも効果を発揮
■サインバルタ
抗うつ効果が強く神経性の痛みへの効果にも優れるものの、服用時に吐き気などが起こりやすい
SNRI系の抗うつ剤はセロトニンに加え、ノルアドレナリンにも作用することから、うつ病に伴う痛みの症状を緩和することにも優れています。
SNRI系抗うつ剤のジェネリック医薬品
イフェクサーやサインバルタにはジェネリック医薬品があります。
先発薬(成分) | ジェネリック医薬品(成分) |
---|---|
イフェクサー(ベンラファキシン塩酸塩) | ベンラーXR(ベンラファキシン塩酸塩) |
サインバルタ(デュロキセチン塩酸塩) | デュゼラ(デュロキセチン塩酸塩) |
先発薬とジェネリック医薬品が同一成分であることはもちろん、海外通販での購入となることから症状が辛い時に通院の手間を省くことができます。
ジェネリック医薬品は低価格であることに加えて、常備しておくことができるのもメリットの1つです。
SNRI系抗うつ剤の作用
SNRI系抗うつ剤の作用は、セロトニンとノルアドレナリンの2つの神経物質が脳内にあるシナプス間隙(神経と神経の間)で再吸収・分解されることを阻害することになります。
この作用によって2つの物質の量が増えることで、次のような効果があります。
- セロトニン → 不安を和らげたり、落ち込みを改善し気分が楽になる
- ノルアドレナリン → 意欲の低下を抑え、さらにうつ病に伴う痛みを緩和することができます。
2つの神経物質のみに作用することで副作用も抑えられ、不快症状を抑えながらうつ病を改善することができます。
NaSSA系抗うつ剤
NaSSA系抗うつ剤は抗うつ効果が強いものの、やや副作用が多めというのが特徴になります。
SNRIやSNRIは神経物質の吸収や分解を阻害することが作用でしたが、NaSSA系抗うつ剤は神経物質の分泌量を増やすことで抗うつ効果を期待できる薬になります。
四環系抗うつ剤から進化した薬でもあり、眠りに付きやすくする作用にも優れています。
効果は優れているものの、副作用の中に体重増加があることから、特に女性は服用を中断して切り替える方が多いです。
NaSSA系抗うつ剤の種類
NaSSA系抗うつ剤にはレメロンやリフレックスのような薬があります。
どちらも即効性があり、効果の強さにも定評がある薬になっています。
また他の抗うつ剤には比較的見られやすい抗コリン作用や性機能障害、胃腸症状などもほとんどありません。
もっとも良い抗うつ剤にも思えますが、体重増加や眠気などが起こりやすいとされています。
眠気は不眠を伴ううつ病患者さんにとってはメリットですが、不眠を抱えていない方には眠気はデメリットになります。
NaSSA系抗うつ剤のジェネリック医薬品
レメロンにはレデプラというジェネリック医薬品があります。
- レメロンの病院処方価格(1錠あたり) ・・・ 170円
- レデプラの海外通販価格(1錠あたり) ・・・ 約86円
およそ半分ほどの価格で購入することができます。
先発薬自体もそこまで金額が高くないものの、長期的な服用となれば治療費にも差が出ます。
飲んで直ぐにうつ病を改善することはできないので、長く服用するのであればジェネリック医薬品がお勧めです。
NaSSA系抗うつ剤の作用
NaSSA系の抗うつ剤は、セロトニンとノルアドレナリンの分泌量を増やす作用があります。
SSRI系やSNRI系の抗うつ剤は分解や吸収を阻害する作用でしたが、NaSSA系抗うつ剤は分泌量を増やすことでうつ病の改善をしていきます。
脳内のシナプス前部にあるα2受容体のはたらきを阻害することで、セロトニンとノルアドレナリンの神経伝達を強めてくれます。
他の抗うつ剤とは異なる作用をもつことからNaSSA系抗うつ剤と併用することも可能で、実際にSNRI系抗うつ剤であるサインバルタとNaSSA系抗うつ剤のレメロンを併用する治療は行われていました。
これを「カリフォルニアロケット」と呼び、2つの薬の相乗効果によってロケットのようにうつ症状を改善していくことをイメージしています。