結膜炎とは、結膜に炎症が起こることで生じる目の病気です。
名前はよく聞く"結膜"ですが、実際にはどの部分のことかご存知でしょうか。
結膜とは、まぶたの裏側から白目までを覆っている粘膜のことになります。
そして結膜に炎症が起こると、様々な症状が現れます。
など
また結膜炎は患者数も多く、目に関する病気の中でも代表的な存在といっても過言ではありません。
ですが結膜炎は原因によって症状の現れ方などが異なり、場合によっては人から人に感染することもあるため注意が必要な病気です。
ここでは結膜炎にどんな種類があり、それぞれにどんな特徴があるのかなどを解説していきます。
結膜炎を治療する際は、目薬を使うことが一般的です。
しかしただ目薬を使っておけば良いというわけでもなく、結膜炎の種類に応じて適した目薬を選ぶ必要があります。
- 細菌性結膜炎 … 抗生物質が含まれた目薬
- ウイルス性結膜炎 … 抗生物質 + 炎症を抑える目薬
- アレルギー性結膜炎 … アレルギーを抑える目薬
結膜炎治療薬として用いられる目薬でも、種類によって効果は様々です。
個人で購入する場合は「自分の結膜炎は何が原因なのか」、また「どんな効果を持つ目薬なのか」といった点に注意しましょう。
結膜炎には、主に次の3種類があります。
- 細菌性結膜炎
- ウイルス性結膜炎
- アレルギー性結膜炎
これらの中でもアレルギー性結膜炎は、アレルギー反応によって症状が現れるため他の人に感染することはありません。
しかし細菌やウイルスが原因となる結膜炎の場合、人から人へと感染することがあります。
そのため細菌性結膜炎とウイルス性結膜炎はまとめて"感染性結膜炎"とも呼ばれます。
種類によって治療方法なども異なるため、何が原因であるかを見極めることが大切です。
細菌性結膜炎とは
細菌性結膜炎とは、文字通り目に細菌が感染することで引き起こされる結膜炎です。
主に次のような症状が現れます。
など
原因となるのは黄色ブドウ球菌やインフルエンザ菌、肺炎球菌などの細菌になります。
特に黄色ブドウ球菌は普段から人の鼻やノド、髪の毛などに住み着いている身近な細菌です。
他の細菌と比べると感染力も弱く、うつる危険性は大きくありません。
しかし目にケガをしていたり、病気などの影響でからだの免疫力が落ちている場合は感染しやすくなります。
~クラミジア結膜炎とは~
性感染症として有名なクラミジアですが、時には結膜炎を引き起こすこともあります。
クラミジアによる結膜炎は「トラコーマ」と呼ばれ、最悪の場合は失明のリスクもある結膜炎です。
その感染経路には「性器からの分泌液による感染」と「母子感染」の2種類があります。
まず前者はクラミジアの感染者の分泌物が手指を介して、目に触れることで感染してしまうことです。
従ってこちらの経路による感染者は大人の方に限定され、目の充血や粘り気のある目やに、まぶたの腫れのような症状が現れます。
治療をせずに放置していると細菌が全身に広がり、例えば女性の場合は子宮外妊娠や不妊症、あるいは流産につながることもあります。
そのためクラミジア菌にも有効な抗生物質を使って、しっかりと治療に取り組みましょう。
一方で母子感染とはクラミジアに感染している女性が出産をした場合に、産道を通じて赤ちゃんに感染してしまうことを言います。
この時に細菌が結膜だけでなくノドや肺などにも感染し、結膜炎だけでなく中耳炎や肺炎などを発症させることもあるため注意が必要です。
クラミジアに感染してしまった場合は、後に生まれてくる子供のためにもしっかりと完治させなくてはなりません。
ちなみにクラミジア以外にも、淋病や梅毒などの性感染症によって目の症状が現れることもあります。
そのため「目の病気かと思って眼科を受診したら性病が発覚した」という事態になることも少なくありません。
ウイルス性結膜炎
ウイルスの感染により発症する結膜炎を、ウイルス性結膜炎と呼びます。
ウイルス性結膜炎にかかると、細菌に感染した時と同じような症状が現れます。
しかし細菌性結膜炎よりも症状が強く、しかも人から人にうつりやすいので注意が必要です。
またウイルス性結膜炎を治療できる薬はまだ開発されておらず、からだに抵抗力がついて自然治癒するのを待つしかありません。
そのため完治まで約3週間~1ヶ月かかることもあります。
さらにウイルス性結膜炎は、感染するウイルスのタイプによって様々な種類に分かれます。
ここでは、代表的なウイルス性結膜炎をご紹介します。
流行性角結膜炎
一般的に「はやり目」と呼ばれているのが、流行性角結膜炎となります。
原因となるアデノウイルス(8型、19型など)の潜伏期間は1週間~10日ほどで、目の充血や痛み、まぶたの腫れなどの症状を引き起こします。
またアデノウイルスの感染力はとても強く、人にもうつりやすいです。
さらに症状が強い場合は、角膜(黒目)の部分に小さな濁りが生じることがあります。
この濁りは自然に消えていきますが、完全に無くなるまではモノが見えにくくなるように感じる場合もあります。
咽頭結膜熱
咽頭結膜熱とは、アデノウイルス(3型、4型など)に感染することで発症する結膜炎です。
夏風邪として、プールの水を介して感染が広がることも多いことから「プール熱」と呼ばれることもあります。
結膜炎の一種のため目の充血や目やにといった症状が現れますが、それに加えてノドの痛みや高熱など風邪のような症状が現れることも特徴です。
ウイルスの潜伏期間は5~7日程度であり、発症してから10日ほどで回復していきます。
しかし悪化すると肺炎に繋がる恐れもあるため、症状が重い場合は注意しましょう。
急性出血性結膜炎
エンテロウイルス(70型)やコクサッキーウイルス(A24変異型)などのウイルスが原因で起こる結膜炎です。
ちなみにこれらのウイルスは名前こそ違うものの、どちらもエンテロウイルスの仲間だと言われています。
"急性"の名前の通りいきなり症状が現れることが特徴で、ウイルスに感染した翌日には発症します。
その症状としては目の痛みや目やにの他、白目の出血もよく見られます。
目がまっ赤になるため驚くかもしれませんが、治るのも比較的早く症状が現れてから1週間以内に回復します。
ヘルペス性結膜炎
口唇・性器ヘルペスなどの原因でもある単純ヘルペスウイルスにより引き起こされる結膜炎です。
しかし大人の方でヘルペス性結膜炎になることは少なく、子供が初めてヘルペスウイルスに感染した時に発症することが多いです。
またウイルス性結膜炎は人にうつりやすい病気ですが、ヘルペス性結膜炎に関しては感染することはほとんどありません。
ヘルペス性結膜炎にかかると目の充血や目やに、目の周りの小さな水ぶくれのような症状が現れます。
さらに角膜ヘルペスという病気を合併することもあるので注意が必要です。
アレルギー性結膜炎
花粉やダニ、ホコリなど…。
本来は無害なものが原因となって発症する結膜炎を、アレルギー性結膜炎と呼びます。
なぜアレルギー反応が起こるのかというと、簡単にいえば「免疫機能の働きすぎ」によるものです。
人のからだには細菌やウイルスなどから身を守るため、免疫機能が備わっています。
しかし人によってはこの免疫機能が、花粉などのような物質にも過剰に反応してしまいアレルギーが起こるのです。
またアレルギー性結膜炎は、症状がどのように現れるかによって次の2種類に分けられます。
- 季節性アレルギー性結膜炎 … 特定の季節にだけ症状が現れる
- 通年性アレルギー性結膜炎 … 1年を通して症状が現れる
日本眼科学会によるとアレルギー性結膜炎の患者さんの中でも約85%は花粉が原因、つまり季節性によるものだとされます。
毎年花粉症の時期になるとくしゃみや鼻水、そして目のかゆみなどに悩まされる方も多いことでしょう。
そのため花粉が多い時期にはマスクや花粉防止用のメガネをつけて外出するなど、日常生活の中で対策をすることが大切です。
一方で通年性アレルギー性鼻炎の患者さんの場合はダニやホコリ、あるいは動物の毛などが原因となって症状が現れます。
そのため常日頃から身の回りを清潔にしたり、部屋の換気をするなどしてアレルゲンとの接触を避けるようにしましょう。
ただし子供の場合、アレルギー性結膜炎が重症化して「春季カタル」へと発展することもあるので注意しましょう。
~春季カタルとは~
春季カタルとは子供、特に小学生の男子によく見られる重症化したアレルギー性結膜炎です。
まぶたの裏側に石垣のようなブツブツができてしまい、まばたきをする度に目の痛みを感じるようになります。
他にも激しい目のかゆみが現れたり、糸状の目やにがたくさん出てくるなど症状が激しいです。
そのため学校の授業を受けられなくなることもあり、日常生活にも大きな影響が生じます。
春季カタルを治療する際は手術をおこなったり、あるいは通常のアレルギー性結膜炎に用いられる治療薬を使うことが一般的でした。
しかし近年では"免疫抑制剤"という春季カタルにもよく効く薬が開発されたことで、以前よりも治療はしやすくなっています。
ちなみに"春季"という名前がついていますが、春季カタルの症状は春だけでなく一年中現れます。
ですが春のように季節の変わり目に悪化しやすいことから、"春季"という名前がつけられたと言われています。