頭痛とは
現在、15歳以上の日本人の内、3人に1人という割合にもなる、3000万人以上が頭痛持ちだと言われています。
3000万人以上という数字からもわかるように、多くの方が悩まされているのが頭痛です。
風邪や二日酔いによって生じる頭痛などの様に、原因が明らかなものもあれば、原因不明の頭痛により仕事や日常生活に支障をきたすこともあります。
また、頭痛薬を飲んでも治っていないような気がすることもあり、頭痛は非常に厄介な症状ともいうことができます。
「頭痛は頭痛」とひとくくりにされがちですが、頭痛にも種類や分類があります。
また、大きな病気のサインで頭痛が起こることもあるのです。
ここでは頭痛のタイプ別に、特徴、原因、改善方法などを解説していきます。
現在、頭痛に悩んでいる方は、ご自身の症状に当てはめてお読みください。
頭痛の対処と改善方法
頭痛といっても、その種類によって対処や改善方法は異なります。
偏頭痛・緊張型頭痛・群発性頭痛の3つの対処法をご紹介します。
偏頭痛の対処と改善方法
カフェインの入った飲み物
カフェインには血管を収縮させる働きがあります。
コーヒーやお茶に含まれていますが、苦手な方は紅茶やココアに代えても良いです。
部屋の明かりを消す
光は頭痛を悪化させる原因になります。
部屋の電気を切って、痛みが落ち着くまで休息しましょう。
首やこめかみを冷やす
首やこめかみを冷やすことで、血管の拡張を抑えることができます。
水枕や冷やしたタオルが良いでしょう。
安静にする
からだを動かすことで偏頭痛は悪化します。
痛みを感じている時は安静にしましょう。
薬の服用
偏頭痛薬には「マクサルト」や「イミグラン」などの内服薬があります。
血管を収縮させ、炎症を抑えることで頭痛の痛みを抑えてくれます。
緊張型頭痛の対処と改善方法
ストレッチ
血流が促されるだけでなく、緊張がほぐれるので効果的です。
首や肩を温める
緊張型頭痛は偏頭痛と違い、血流を良くすることが効果的です。
温めたタオルやお風呂で温めるのも良いでしょう。
群発性頭痛の対処と改善方法
群発性頭痛のケースでは激しい痛みに襲われることから、病院での治療が必要になります。
頭痛が酷く続く場合は、自己判断をしないで早めに医療機関を受診してください。
頭痛の種類
まず、頭痛は大きく以下の2つに分類することができます。
- 一次性頭痛(機能性頭痛)
- 二次性頭痛(器質性頭痛)
さらに、一次性頭痛と二次性頭痛についても、それそれで細かく頭痛の種類が分けられています。
一次性頭痛
一次性頭痛は、日常的に起こる頭痛のことを意味しています。
病気とは関係なく、9割の頭痛がこの一次性頭痛によるものです。
~偏頭痛と片頭痛の違い~
携帯やパソコンで「へんずつう」と打ち込んだときに「偏頭痛」または「片頭痛」かで悩んだことがあると思います。
ふたつの違いは何なのでしょうか。
実はどちらも意味は同じだそうです。
辞書では「偏頭痛」と出てきますが、医学的には「片頭痛」が使われています。
文字の意味としては、頭のどちらか「片方」が痛くなって、それは日によって変わり「偏った頭痛」をあらわしています。
また「偏頭痛」とは中国古来の頭痛の呼び方で、頭の一部が痛くなることを指しており、片頭痛とは少し定義が異なるという説もあります。
二次性頭痛
二次性頭痛は、何かほかの病気によって起こる頭痛のことです。
この頭痛には、危険度の高い病気が隠れていたりします。
頭痛人口の種類別割合
頭痛に悩む3000万人以上のうち、緊張型頭痛が2200万人、片頭痛が840万人、群発性頭痛が1万人と言われています。
何かしらの病気による症候性頭痛は毎年、1万人~3万人発生しています。
近年では男性よりも女性のほうが頭痛症状を訴えることが多く、緊張型頭痛の6割、片頭痛の8割が女性です。
臨床試験では723名の女性のうち、月に1回以上の頭痛を感じている方の割合は73.4%にも上り、多くの女性が頭痛で悩んでいることが分かりました。
~男性の頭痛と女性の頭痛~
頭痛は男性も女性も10代~40代に多くみられ、女性の場合は男性よりも3倍頭痛になりやすいそうです。
また、女性が発症する頭痛には「前兆がないことが多い」という調査結果もありました。
男性と女性でからだの仕組みが違うように、頭痛にも違いがあるのです。
【女性】
女性は「生理」「妊娠」「出産」「閉経」など、からだに大きな変化があり、これらは女性ホルモンの乱れも関係しています。
ホルモンバランスの乱れは、頭痛と大きく関係しているとも言われているのです。
冷え性で悩まされる女性も多く、低体温も頭痛を起こすひとつの原因だとされています。
【男性】
女性に男性ホルモンが存在するように、男性にも女性ホルモンが存在しています。
頭痛は女性の病気だと思われがちですが、最近では片頭痛を訴える男性も増えているのです。
「痩せている」「優しい雰囲気」の第一印象を持った方に多く、片頭痛をうったえる方がいるそうです。
特に男性は「出張」「営業」「転勤」などの環境の変化が原因で、頭痛に悩まされる方も多く、「接待」でのアルコールやタバコが更にストレスとなって頭痛を引き起こす原因になっていると考えられています。
頭痛の仕組み
頭痛とは「頭部の一部あるいは全体の痛みの総称」が定義となっています。
後頭部と首の境目である後頸部や、眼の奥の痛みも頭痛として含まれています。
ただし、頭皮の外傷や化膿など、頭の表面の一部の痛みは頭痛には含まれていません。
頭痛は症状の呼び名でもありますが、慢性的に頭痛発作を繰り返す場合は「頭痛性疾患(頭痛症)」として扱われます。
一般的には、「頭痛=脳が痛い」と思われがちですが、私たち人の脳や頭蓋骨には痛覚は無く、つついても痛みを感じません。
頭痛が起こるメカニズムはおもに3つに分けられています。
①侵害受容性痛
頭部の炎症や圧迫など痛みを感じる部分に有害な刺激が加わった痛み
②神経障害性痛
必ずしも有害な刺激はないのに、神経が何らかの異常をきたして痛みを感じる
③心因性痛
有害な刺激や神経に異常はないがストレスや不安など、こころの問題のよって痛みを感じる
頭痛の発生と痛みの伝達
頭痛が起こる原因の多くは「侵害受容性痛」だと考えられています。
初めの有害な刺激の起こり方や作用の仕方などによって、頭痛の種類が分類されるのです。
「頭蓋骨の外側の皮膚」「頭部の血管・筋肉・神経」これらの頭部の組織は、痛みを感じることができる「痛覚受容器」があります。
皮膚の刺激は小さくせまい痛みとして感じられますが、血管が刺激されると、より広範囲に痛みを感じます。
簡単に言えば、1円玉程度だった皮膚の刺激による痛みが、血管の刺激によって10円玉になるような感覚です。
頭蓋骨に痛みはないと先ほどお話しましたが、頭蓋の骨膜(骨の表面の膜)は痛みを感じます。
頭蓋内である脳そのものも痛みは感じませんが、静脈動や脳硬膜(脳と脊髄を覆う髄膜のひとつ)に分布している動脈、脳底部(記憶や印象が保持されている場所)の動脈には痛覚があります。
頭蓋内組織が刺激されるとその場所だけではなく、頭蓋外が痛いと感じてしまいます。
これを「関連痛」と言います。
歯・鼻・耳などによる病気によって、頭が痛いと感じてしまうのも関連痛になります。
また、食べ物に含まれている物質が、血管拡張・収縮作用を起こすことがあり、頭痛の誘因ともなりえます。
一般的な頭痛のメカニズムとしては、次のようなものがあります。
- 痛覚感受部位に炎症が起こる
- 痛覚感受部位(静脈動や動脈)が圧迫されたり、引っ張られる
- 脳動脈が伸たり広がったり、拡張あるいは炎症
- 頭や首の筋肉が持続的に収縮
- 脳神経や上部の頸髄の脊髄神経が圧迫される
~天気の変化で起こる頭痛~
「頭が痛くなってきたからから雨が降るかも」と感じる方もいらっしゃるかと思います。
天気と頭痛は関係性がないように思われてしまいがちですが、実は大きく関係があるのです。
天気の変化は気圧の変化です。
この気圧の変化が、脳の血管に影響を与えて頭痛を引き起こしているのです。
低気圧になると天気が悪くなります。
気圧とは、大気の重さが地面にかかる圧力のことです。
低気圧のときは地面にかかる圧力、大気の重さが低くなるのです。
地面の上で生活する私たちにかかる圧力も低くなります。
そのため、脳の血管をおさえていた圧力も下がり、血管が拡張しやすくなるのです。
脳の血管が拡張され、周囲にある神経(三叉神経)を刺激してしまって、これによって頭痛が起こることがあるのです
慢性頭痛の特徴
痛いときや痛くないときがあるのが「慢性頭痛」です。
一般的に慢性頭痛とは「一次性頭痛」「機能性頭痛」と言われています。
検査をしてもからだの異常は特に見当たらないのが特徴です。
簡単に言えば「頭痛持ち」のことです。
この慢性頭痛には3つの種類があります。
痛みによって寝込んでしまう方もいれば、日常生活に支障をきたすほどではないという方もいて、痛みの程度は人それぞれです。
ストレスによって歯ぎしりを起こし、それが原因で頭痛を起こすというケースも増えています。
偏頭痛の特徴と原因
偏頭痛は「へんとうつう」とも呼ばれ、以下の特徴があります。
偏頭痛の特徴
- 頭の片側あるいは両側が「ズキンズキン」と脈打つように痛い
- 吐き気や嘔吐を伴うことがある
- 頭痛の前兆を感じる(目の前がチカチカするなど)
- めまいも起こすことがある
- 遺伝することがある
- 頭やからだを動かすと痛みが強くなる
- 音や光に敏感になる
- 酷くなると頭全体が痛くなる
- 20代~40代の女性がなりやすい
朝起きたときに感じる頭痛や、太陽光などを頭や目に受けて起こる頭痛の場合は、片頭痛の可能性が高いです。
激しい運動のあとや緊張が解けてリラックスしたときや休日などにも起こりやすく、片頭痛患者の1割前後で前兆がみられます。
生活に支障をきたす度合いが高く、痛くなりだすと2~3日間は続いて1ヶ月に1~2回、多い方では1週間に1回頭痛を繰り返す場合もあります。
また、何らかの要因によって次のように片頭痛の発作が引き起こされます。
「予兆期」「前兆期」「頭痛期」「回復期」「寛解期(かんかいき)」
「予兆」は片頭痛が起こる数時間前や人によっては1日か2日前になんとなく「気分が落ち込む」「集中しづらい」などの漠然とした症状があらわれます。
偏頭痛の予兆と進行
- 肩コリや首のコリを感じることがある
- 生あくびが出る
- 食欲増加
- 疲労感
偏頭痛の前兆では「目がチカチカする」「ものが見えにくくなる」などの「閃輝暗点(せんきあんてん)」が出ることがあります。
他にも感覚が鈍くなったりする「感覚異常」、話しづらくなる「言語障害」などがあらわれることもあります。
ですが、前兆は起きても頭痛は起こらないという方もいます。
偏頭痛の分類は、日本頭痛学会の「国際頭痛分類第3版beta版」を基準に行うようすすめられています。
一般的な診療では「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」に分けられており、前兆を感じる方は20~30%と言われています。
前兆のある片頭痛
A.以下のBおよびCを満たす発作が2回以上ある
B.以下の完全可逆性前兆症状が1回以上ある
- 視覚症状
- 感覚症状
- 言語症状
- 運動症状
- 脳幹症状
- 網膜症状
C.以下の4つの特徴を少なくとも2つ満たしている
- 少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展、または2つ以上の前兆が引き続き生じる(あるいはその両方)
- それぞれの前兆症状は5~60分持続する
- 少なくとも1つの前兆症状は片側性である
- 前兆に伴って、あるいは前兆発現後、60分以内に頭痛が発現する
D.ほかに最適なICHD-3がない、または一過性脳虚血発作が除外されている
前兆のない片頭痛
A.以下のB~Dを満たす発作が5回以上ある
B.頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C.頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2つを満たす
- 片側性
- 拍動性
- 中等度~重度の頭痛
- 日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が悪化、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D.頭痛発作中に少なくとも以下の1つを満たす
- 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
- 光過敏および音過敏
f
E.ほかに最適なICDH-3の診断がない
「予兆期」「前兆期」をこえて「頭痛期」になります。
頭痛が起こって肩こりが悪化したり、ひどいときは嘔吐や吐き気を伴います。
普段気にならない音や光さえも、不快に感じてしまうことがあるのです。
頭痛期のあとは疲労感や眠気があらわれ、自然と痛みはなくなって頭痛が消えていきます。
これを「寛解期(かんかいき)」と言います。
簡単に言えば頭痛が起こらない落ち着く時期です。
偏頭痛の原因
偏頭痛の発生メカニズムは、まだハッキリと解明されていない部分もあります。
現在わかっているのは「神経血管やセロトニン」「遺伝や血管作動作用のある食品」「頭痛薬の服用過多(薬剤性頭痛)」などが関係しているということです。
神経血管
何らかの刺激によって血管が拡張し、拍動に合わせて周囲の神経に刺激が伝わることで片頭痛は起こります。
血管が拡張すると、その周囲にある頭の中で一番大きな神経「三叉神経(さんさしんけい)」が圧迫されて刺激を受けます。
刺激を受けた三叉神経からは「神経ペプチド」と呼ばれる痛みの原因となる物質が放出されて、血管に炎症を起こします。
それによって血管はより拡張し、さらに三叉神経が刺激を受けます。
この刺激が脳に伝わって痛みとして認識されることで頭痛が起こるのです。
セロトニン
セロトニンの過剰放出も片頭痛の原因だと考えられています。
「早漏」「ED」「うつ病」などにも大きく関係しているセロトニンですが、過度のストレスによって脳が刺激を受けるとセロトニンが放出されます。
血管を収縮させる作用があるため、セロトニンが大量に放出されると脳の血管が収縮します。
時間が経つとセロトニンが分解されて減っていくので、逆に血管が拡張してしまい頭痛を起こしてしまうのです。
遺伝
遺伝の場合、母親が片頭痛持ちであれば50%の確率、父親の場合は30%の確率で子供に遺伝すると言われています。
両親どちらも片頭痛であった場合、遺伝で片頭痛になる確率は70%になるとも言われているのです。
「祖父→母」から遺伝する隔世遺伝のケースもあります。
血管作動作用のある食品
頭痛の誘因となる食品はたくさんありますが、それらの食品に含まれている物質が血管作動作用をもたらして頭痛が起こります。
血管作動作用は「血管拡張」と「血管収縮」があり、どちらも片頭痛発作の誘因となりえます。
【血管拡張作用のある食品(物質)】
- アルコール飲料(特に赤ワイン(ヒスタミン様物質、アルコール、ポリフェノール))
- ベーコン、ソーセージ(亜硝酸化合物)
- アスパルテーム(甘味料)
【血管収縮作用のある食品(物質)】
- チョコレート、ココア(チラミン、ポリフェノール、カフェイン)
- チーズ、柑橘果物(チラミン)
- スナック菓子、うまみ調味料など(グルタミン酸ナトリウム)
- コーヒー、紅茶、緑茶など(カフェイン)
また、中華料理に多く含まれている、うまみ調味料の成分グルタミン酸ナトリウムによって、頭痛が起こることも多く「チャイニーズレストランシンドローム」とも言われています。
これらの原因により、血管の収縮・拡張のリズムが乱れて頭痛が起きると考えられています。
頭痛薬の服用過多
なぜ原因になるのかはまだ解明されていませんが、痛み止めを飲むと頭痛がこじれる場合があると言われています。
これは「薬剤誘発性頭痛」と呼ばれており、2ヶ月3ヶ月と痛み止めを服用していると逆に頭痛が悪化します。
連続で服用することで発症することから「慢性連日性頭痛」とも言われています。
他にも以下のものが原因となることがあります。
- ホルモンバランスの乱れ(女性は月経や妊娠など)
- ストレス
- 緊張
- アンバランスな食生活
- 疲労
- アルコール
- タバコ
- 睡眠不足や睡眠過多などの生活習慣の乱れ
- 熱いお風呂やサウナ
また、アレルギーとの関連性は解明されていませんが、気管支喘息やシックハウス症候群に関連した、揮発性有機化合物の過敏症による片頭痛発作の報告もあります。
さらに、アレルギー性鼻炎の憎悪時に偏頭痛が激しくなることもあります。
頭痛が長引くと刺激がさらに増して、痛みが悪化するという悪循環になることもあるので、痛みが軽いうちから早めに対処することが大切です。
緊張型頭痛の特徴と原因
慢性頭痛の中でも特に多いのが緊張型頭痛で、7~8割を占めています。
比較的、中高年に多くみられますが、最近ではゲーム世代と呼ばれる若い方たちにも少なくはありません。
年齢や性別に関係なく、誰でも発症する可能性がある頭痛と言えます。
緊張型頭痛の特徴
- 肩や首のコリを頭痛と一緒に感じる
- 頭が全体的に締め付けられるように痛む
- 頭が重い
- 毎日頭痛が起こる
- 後頭部や首筋も痛む
- 動くと痛みが楽になるときもある
- めまいを伴う
- 歯ぎしりや顎関節症を伴う
- 倦怠感がを伴う
偏頭痛と似た痛みがありますが、偏頭痛のように生活に支障が出るほどではありません。
運動などからだを動かすことで痛みが楽になることがあります。
痛みが起こると、数十分からダラダラと1週間ほど続いたりすることもあり、同時に「肩コリ」「首のコリ」「めまい」などの症状が起きたりもします。
締め付けられるような痛みから、中には「孫悟空の金の輪をはめられたような痛み」と表現する方もいます。
緊張型頭痛を簡単に見分けるには親指を使って、頭や肩、首の筋肉を軽く押さえます。
痛いから止めてほしいと思う程の痛みを感じる場所があれば、緊張型頭痛と考えても良いでしょう。
緊張型頭痛の分類
緊張型頭痛は大きく分けると、ときどき頭痛がする「反復性緊張型頭痛」と、頭痛が毎日のように続く「慢性緊張型頭痛」に分けられます。
反復性緊張型頭痛は更に「稀発」と「頻発」に細かく分けられています。
稀発反復性緊張型頭痛
1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で生じる頭痛
頻発反復性緊張型頭痛
1ヶ月に1日以上、15日未満(年間12日以上180日未満)の頻度で生じる頭痛
慢性緊張型頭痛
1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で生じる頭痛
緊張型頭痛の疑い
緊張型頭痛の疑いは緊張型頭痛の診断基準をひとつだけ満たさず、かつ片頭痛でないものである
緊張型頭痛の診断基準
反復性緊張型頭痛の診断基準
A.稀発、頻発で分かれる
B.頭痛は30分~7日間持続する
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2つを満たす
- 両側性
- 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
- 強さは軽度~中等度
- 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
- 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
- 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.その他の疾患によらない
慢性緊張型頭痛の診断基準
A.3ヶ月以上にわたり、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する頭痛で、かつB~Dを満たす
B.頭痛は持続するか、あるいは絶え間なく続くこともある
C.頭痛は以下の特徴の少なくとも2つを満たす
- 両側性
- 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
- 強さは軽度~中等度
- 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
- 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか1つのみ
- 中等度、重度の悪心や嘔吐はない
E.その他の疾患によらない
緊張型頭痛の原因
緊張型頭痛は、筋肉が緊張することで起こります。
その原因はストレスや疲労が重なったものだと考えられています。
- パソコン操作
- うつむき姿勢
- 車の運転
- 枕が合っていない
- 精神的ストレス
- 身体的疲労
- 運動不足
- 歯のかみ合わせ
- 冷え
不自然な姿勢や冷えなどの状態が続いてしまうと、首から肩の筋肉が収縮してこって、筋肉内の血流が減ってしまいます。
すると血流に含まれる酸素が不足して疲労物や痛みを起こす物質が溜まり、神経を刺激して頭痛が起こります。
また、精神的ストレスを感じると脳の自律神経を司る部分がストレスへの対処法として、血管を収縮させてしまいます。
それによって筋肉を固くして身を守る姿勢を取ろうとしてしまい、血流が悪くなり肩コリなどが起こります。
さらに、この緊張型頭痛は偏頭痛と合併する「混合型頭痛」があります。
「緊張型頭痛は筋肉の収縮」「偏頭痛は血管の拡張」が原因によるものです。
偏頭痛がおさまっているときに、緊張型で肩や頭がダルく重い状態になってしまいます。
重苦しい痛みが毎日続いていながらも、1ヶ月に1回以上ズキンズキンと激しい痛みが起こることが特徴です。
群発性頭痛の特徴と原因
20~40代の男性に多くみられており、ある期間に集中して起こります。
緊張型頭痛や偏頭痛に比べると患者数は少なく、0.056%~0.4%(1000人に1人程度)と報告されています。
有病率は女性の4~5倍です。
群発地震のようにある期間に集中して起こることから「群発性頭痛」と名付けられました。
群発性頭痛はある一定の期間、ほぼ毎日決まった時間に非常に強く痛み「目の奥がえぐられるように痛い」と表現されることがあります。
あまりの痛さに自殺をしたくなるほどつらいということから「自殺頭痛」という異名もあります。
また、心筋梗塞・尿路結石とならんで、生きているうちに味わう三大痛のひとつとも言われているのです。
群発性頭痛の特徴
- 必ず片側が痛む、特に目の奥が痛い
- 1日に1~2回起こり、1回の痛みは15分~3時間は続く
- 1~2ヶ月間毎日のように決まった時間に起こる
- 直前に目のかすみ、肩のハリなどの前兆がある
- 目の充血、涙目、鼻水などの自律神経を伴う
- 痛みが強くじっとしていられない
- 6ヶ月~3年くらいの期間で定期的に起こる
- 動くと痛みが紛れる
痛みが起こると大体1~2ヶ月ほど続きます。
この頭痛が起きている期間を「群発期」と言います。
群発期を過ぎると頭痛はすっかり治っているのです。
その後、6ヶ月~3年と時間が経ってからふたたび群発期が訪れます。
睡眠中に起こりやすく、痛みで目を覚ますことがあるほどと言われています。
頻度が比較的まれなので偏頭痛と勘違いしたり、発作中に鼻水や涙が出てきたりすることもあるため、風邪の症状と間違えられることもあります。
頭痛が起きている側の目が充血するということもありますが、偏頭痛のように嘔吐や吐き気はあまり見られません。
男性に多いですが、女性がならないというわけでもありません。
あまりの痛さにじっとしていることが出来ず、痛みを紛らわすために動き回ったり、ひどいときは痛すぎて壁に頭を打ち付けるという方もいるようです。
群発性頭痛の予兆
群発性頭痛は遺伝子的要因も関与されていると言われています。
症状が起きているおよそ5%の方が、家族にも同じ症状があると報告されています。
ですが、どの男性にも発症の可能性は十分あり得ます。
そして、予兆のサインとして以下のことがあげられています。
群発性頭痛の分類
患者のおよそ10~15%は寛解期(頭痛が落ち着く時期)がない慢性群発頭痛とされています。
反復性群発頭痛
群発性頭痛発作が7日~1年続く群発期があり、群発期と群発期のあいだには少なくとも1ヶ月の寛解期がある
慢性群発頭痛
群発性頭痛発作が1年をこえて発現しても寛解期がないか、または寛解期があっても1ヶ月未満である
群発性頭痛の診断基準
A.頭痛は以下のCを満たす
B.頭痛を引き起こしうることが科学的に実証されている他の疾患の診断がなされている
C.原因となる証拠として、以下のうち少なくとも2つが示されている
- 頭痛が原因と推測されている疾患と時期的に一致して発現している
- 以下のいずれかもしくは両方
a.頭痛は原因と推測される疾患が悪化するのと並行して有意に悪化している
b.頭痛は原因と推測される疾患が軽快するのと並行して有意に悪化している
- 頭痛は原因疾患の典型的な特徴を有している
- 原因となる他の証拠が存在する
D.ほかに最適なICHD-3の診断がない
群発性頭痛の原因
偏頭痛と同様に群発性頭痛の発生メカニズムは解明されていない部分があります。
しかし、今現在で有力とされているのは「アルコール」と「血管」が関係していると考えられています。
偏頭痛と同じく血管の拡張によって頭が痛くなるのですが、偏頭痛との違いは血管が拡張される場所です。
群発性頭痛の場合は、目の後ろを通っている内頚(ないけい)動脈の血管が、何らかの原因で拡張して炎症を起こすため、目の奥が痛くなると考えられています。
血管が拡張することで自律神経を刺激して、涙や充血、鼻水などの症状も同時に起こしてしまいます。
また、群発期にアルコールを摂取すると、ほぼ100%の確率で頭痛が起こると言われています。
寛解期であれば問題はありません。
他にも以下の原因が考えられています。
- 男性ホルモン
- タバコ
- 昼寝
- 睡眠不足
- 気圧の変化
- 季節の変わり目
- 入浴
- ストレス
- 体内時計
また、食品で群発性頭痛を起こしてしまうこともあるようです。
- グルタミン酸ソーダ
- 熟成チーズ
- 熟成肉
- チョコレート
グルタミン酸ソーダは化学調味料として用いられていて、「味の素」がよく知られています。
食品(物質)に関しては必ずしも重要視する必要があるというわけではありませんが、少し気に留めておくと良いでしょう。
症候性頭痛の特徴
症候性頭痛は二次性頭痛または器質性頭痛であり、偏頭痛や緊張型頭痛、群発性頭痛などの一次性頭痛とはまったく異なります。
この症候性頭痛は病気によって引き起こされる頭痛で、命に関わるほど危険な場合もあります。
非常に激しい頭痛を伴いますが、普段から慢性頭痛を持っている方の中には、いつもの頭痛だと思って放置してしまう方もいます。
しかし、この頭痛を放置することはとても危険なので、下記の症状を感じたら医療機関による早めの受診が必要です。
症候性頭痛が疑われる症状
- 突然の頭痛
- 今まで経験したことのない頭痛
- いつもと様子の違う頭痛
- 吐き気や嘔吐、意識の低下を伴う
- 後頭部に痛みを感じる
- 頻度と程度が増していく頭痛
- 50歳以降に初発の頭痛
- 神経脱落症状を有する頭痛
- がんや免疫不全の病態を有する患者の頭痛
- 精神症状を有する頭痛
- 発熱、項部硬直、髄膜刺激症を有する頭痛
これら症状が出た場合は、症候性頭痛を疑った方が良いでしょう。
症候性頭痛の診断基準
A.頭痛は以下のCを満たす
B.頭痛を引き起こしうることが科学的に実証され、他の疾患の診断がなされている
C.原因となる証拠として以下のうち、少なくとも2つが示されている
- 頭痛が原因と推測されている疾患と時期的に一致して発現している
- 以下のいずれかもしくは両方
a.頭痛は原因と推測される疾患が悪化するのと並行して有意に悪化している
b.頭痛は原因と推測される疾患が軽快するのと並行して有意に悪化している
- 頭痛は原因疾患の典型的な特徴を有している
- 原因となる他の証拠が存在する
D.ほかに最適なICHD-3の診断がない
症候性頭痛で疑われる疾患
くも膜下出血
脳は内側から「軟膜」「くも膜」「硬膜」の3つの層に覆われています。
この軟膜の動脈にできた動脈瘤(どうみゃくりゅう)が高血圧などによって破裂して血管が破れ、くも膜と軟膜の隙間に血液があふれてしまう病気です。
今まで経験したことのないような突然の激しい頭痛に襲われてその痛みがしばらく続き、場合によっては死に至ることがあります。
ですが、出血の仕方や程度によって、頭痛の感じ方や現れ方は違ってきます。
少量の出血を繰り返すタイプのくも膜下出血の場合はそこまで激しい痛みはないので、本人は片頭痛と勘違いしてしまう場合もあるのです。
ひどい出血の場合は激しい頭痛だけでなく、嘔吐やけいれん発作なども起こり意識を失うこともあります。
大量に出血を起こす数日~数週間前には少量の出血が起こることがあり、このときにも頭痛が起こります。
出血が少ないと首筋が硬直したり、首の付け根からうなじあたりにかけて痛みを感じます。
中には頭痛というより、ひどい肩コリを感じるケースも見られています。
再出血が起こるとより重症化してしまうため、発症してから数時間以内に手術などの適切な処置を行って、再出血を防ぐことがとても重要です。
脳腫瘍
脳腫瘍とは「脳」「脳を覆う膜」「血管」など、頭蓋内のさまざまな組織にできる腫瘍の総称です。
脳腫瘍による頭痛は腫瘍が原因のために、脳内の圧力が高まることで起こります。
朝起きたときに激しい頭痛に襲われ、起きてからしばらくすると頭痛が落ち着いているケースが多いようです。
最初から脳そのものにできる「原発性腫瘍」と、他の臓器のガンなどが転移してできた「転移性腫瘍」があり、原発性腫瘍に良性と悪性があります。
ですが、どちらにせよ脳を圧迫してしまうので命に関わる問題です。
頭全体あるいは頭の一部に圧迫感や頭重感、鈍痛が続いて突然の嘔吐、けいれん発作に襲われるような場合は、脳腫瘍を疑った方が良いでしょう。
はじめは痛みが弱く、徐々に腫瘍は大きくなってくると痛みが強まっていき、弱まることはありません。
頭痛以外にも視力の低下や、物が二重に見えるなどの視力障害、手足のマヒ、けいれん、耳鳴り、めまいなどが起こることもあります。
また、突然の嘔吐や吐き気を伴うこともあります。
異常を少しでも感じたらすぐにでも、医師の診断を受けるのが良いでしょう。
髄膜炎
細菌やウィルスなどの感染によって、くも膜や軟膜が炎症を起こします。
「中耳炎」「副鼻腔炎」「風邪」などがきっかけとなって発症します。
症状が発熱と頭痛のため風邪と間違えて、治るまで風邪薬だけで処置することも少なくありません。
ウィルスによる感染の場合は自然に治ることも多いので、むやみに心配する必要はありませんが、炎症が脳にまでいくと意識を失うことがあります。
細菌による感染の場合はとても注意が必要で、治療が遅れると死に至るケースもあります。
頭を振ったりすると痛みが強くなります。
後頭部に強い痛みを感じて首筋が硬直して吐き気や嘔吐、38~39℃の高熱を伴うので、これらの症状が見られるときは髄膜炎の疑いがあります。
早急に医師の診断を受けたほうが良いでしょう。
脳出血
脳に栄養を送っている血管が破裂して、脳の中に出血してしまう病気です。
少しずつ血液が溜まって頭の中が圧迫され、神経が刺激されることで頭痛が起こります。
右か左どちらかの手や足のしびれ、マヒ、ろれつがまわらずに上手くしゃべれなくなるなどの言語障害、脱力感などの症状を伴う場合は、脳出血が疑えます。
高血圧性脳症
高血圧に耐えきれずに代謝異常が起こったりした場合に、脳内に水が溜まり脳がむくむ病気です。
頭の中が圧迫されて神経が刺激を受けることで、頭が痛いと感じます。
この状態が続くと意識障害やけいれん、嘔吐、視力障害などの症状があらわれてきます。
早朝に頭痛が起きやすいのが特徴です。
慢性硬膜下血腫
頭をぶつけたなどの頭部の外傷のあとに、硬膜とくも膜のあいだに1~2ヶ月と徐々に出血が起き、血のかたまりができる病気です。
かたまりが小さいうちは症状がありませんが、出血が増えて血のかたまりが大きくなることで脳を圧迫して頭痛を感じます。
頭痛に伴い嘔吐や手足のしびれ、マヒ、けいれん、言語障害、物忘れなどの認知機能障害も起こります。
首を振ると痛みがひどくなるのも特徴です。
強い衝撃を受けていなくても起こることがるので、気を付けなければいけません。
脳動脈解離
動脈の壁は外側から「外膜」「中膜」「内膜」の3層になっていて、内膜に亀裂が生じることで血液が入り込んで動脈の壁が避けてしまう病気です。
その結果、くも膜下出血や脳梗塞を起こす原因にもなります。
何らかの外傷のあとに起こることもあれば、スポーツや日常生活で首をひねったり伸ばしたりするだけでも起こる可能性があります。
軽症であれば自然とケガが治るように、一時的な頭痛だけであって裂け目も治ることもあります。
副鼻腔炎
鼻と副鼻腔をつないでいるところが、細菌感染やアレルギー反応などによって閉じられてしまい、副鼻腔に膿が溜まった状態のことです。
慢性では頭痛は起きず、急性の場合に頭痛がすると考えられています。
鼻水や鼻がつまっているときに、前頭部や顔面に痛みを感じたら副鼻腔炎の疑いがあります。
眉間や頬骨をたたくと痛い場合も同様です。
側頭動脈炎
大動脈またはそれにつながる動脈が炎症を起こしている状態です。
こめかみにある動脈が膨れて、ズキズキと脈拍に合わせて持続的に痛みます。
微熱が見られることもあります。
痛みに伴い、顎のだるさや眼痛、全身倦怠感、視力障害、食欲低下などの症状がみられたら側頭動脈炎の可能性があります。
最悪、失明につながってしまうことがあるので、早めに医師の診療を受ける必要があります。