高い血圧と書いて「高血圧」は生活習慣病の1つになり、日本の患者数はおよそ4300万人にも上ると言われています。
国内人口を1億2千万人とするなら、実に3人に1人が高血圧と言えます。
高齢化社会や食生活の変化(欧米化)などによって、今後も患者数は増加していくと予想されている病気です。
高血圧の状態が長く続いてしまうと、それだけ血管へかかる負担も大きくなることから脳や心臓などに重い病気を引き起こす危険性もあります。
高血圧
高血圧は生活習慣病の1つで血圧が高い状態が続く病気です。重い病気を引き起こすこともあるので血圧を下げる治療が必要です。
高血圧の一覧
高血圧とは
高血圧の治療方法
高血圧を改善するためには、高血圧治療薬が用いられます。高血圧症の治療薬には7種類あるため、ご自分に合っている治療薬を選びましょう。
薬以外にも、生活習慣の見直しも必要になります。
血圧をコントロールするためには、カロリーオフや減塩などを意識した食生活や、適切な食事量などを守ることが大切です。
また有酸素運動を取り入れ、薬だけでなく日常生活を改善していきましょう。
血圧とは
人が生命を維持するために必要なのが"心臓"です。
心臓から血液が送り出されることで、血液にのってからだ中に酸素や栄養を補給することで生きることができます。
血圧とは、からだ中に流れていく血液が"血管に加える圧力"のことを指しています。
心臓から血液が流れていく時に血管はギュッと収縮します。
この時に血管にかかる圧力を「収縮期血圧」と呼びます。
収縮期血圧が血圧の最高値になります。
一方で、血液は循環して再び心臓に戻ってきますが、この時に心臓は拡張します。
これを「拡張期血圧」と呼びます。
拡張期血圧が血圧の最低値になります。
聞いたことはあるかも知れませんが「血圧の上と下」とは、"上"が収縮期血圧で"下"が拡張期血圧のことになります。
正常血圧について
血圧の正常値は、※上が129mmHg、下が84mmHgまでになります。
上と下でどちらかが正常値を超えていた場合には、正常血圧ということはできません。
また自宅で血圧を測定した場合には、リラックスした環境になることから正常値は低く設定されていて、上が124mmHg、下が79mmHgとなっています。
血圧正常値一覧 | 収縮期血圧(上) | 拡張期血圧(下) | 自宅測定 |
---|---|---|---|
至適血圧 | 119mmHgまで | 79mmHgまで | |
※正常値 | 120~129mmHg | 80~84mmHg | 125/80mmHg未満 |
正常高値 | 130~139mmHg | 85~89mmHg |
もしご家庭内に血圧測定器があるのであれば一度自分の血圧を測定してみて、正常血圧と比較してみてください。
どこからが高血圧(基準)
高血圧と診断される基準は、次のようになっています。
○上(収縮期血圧) ・・・ 140mmHg以上
○下(拡張期血圧) ・・・ 90mmHg以上
上と下の数値の基準を超えていると、高血圧と診断されます。
また自宅で血圧を測定することができる家庭血圧で測った場合の規準は少し変わります。
○上(収縮期血圧) ・・・ 135mmHg以上
○下(拡張期血圧) ・・・ 85mmHg以上
自宅で測定した場合の数値は少し低めで、上と下の2つが数値を超えていれば高血圧と判断できます。
血圧は1日の中だけでも変動します。
一般的には眠っている時は低く、起床時から徐々に上昇していき、日中の活動量が多い時間帯に高くなります。
そして夕方ごろから再び睡眠時にかけて徐々に低下していきます。
また、食事をした後や運動後、感情の変化などによっても血圧は変動します。
高血圧患者さんの中には、睡眠時に血圧が上昇してしまう「夜間高血圧」や朝方に血圧が上昇してしまう「早朝高血圧」の患者さんがいます。
夜間や早朝の高血圧は"脳卒中"や"心筋梗塞"になることが指摘されていて、実際に午前6時~正午にかけて脳卒中の発生率がもっとも高いとされています。
思わぬ時に重い病気を発症しないように、血圧をコントロールすることが大切です。
高血圧の原因
高血圧は原因にとって2種類にわけることができます。
原因がはっきりしている高血圧 ・・・ 二次性高血圧
原因がはっきりしていない高血圧 ・・・ 本態性高血圧
それぞれを以下で解説していきます。
二次性高血圧
高血圧患者さんの10~15%は、何かしらの原因があって起こる「二次性高血圧」と言われています。
- ホルモン分泌に異常
- 腎臓疾患
- 薬の副作用
二次性高血圧の場合には、血圧の薬(血圧降下薬)を使った治療ではあまり効果が期待できないことが多いです。
血圧が上がっている原因を治療することによって、血圧は次第に下がるようになると考えられています。
原発性アルドステロン症とは、副腎から分泌される「アルドステロン」というホルモンが過剰に分泌されてしまう病気です。
アルドステロンには、からだの塩分を増加させるはたらきがあることから高血圧の原因になってしまいます。
この病気はもともと稀なことと考えられていましたが、最近では高血圧の患者さんに多く見られます。
本態性高血圧
日本人の高血圧患者さんの85~95%は原因がはっきりしていない本態性高血圧と言われています。
もともと体質的に高血圧になりやすい人や塩分の摂り過ぎ、過度の飲酒、肥満、ストレス、喫煙などが原因となって発症すると考えられています。
本能性高血圧症と診断された場合には、そこからリスクによって更に分けることができます。
- Ⅰ度高血圧症 ・・・ 低リスク
- Ⅱ度高血圧症 ・・・ 中等リスク
- Ⅲ度高血圧症 ・・・ 高リスク
Ⅲ度高血圧症にもなると、生活習慣の見直しといっしょに治療薬を用いた治療が必要になります。
高血圧による重い病気
高血圧状態が続いてしまうと"動脈硬化"が進行し、やがて脳や心臓といったからだの中でも重要な器官に病気を起こすようになります。
脳の病気
脳の動脈硬化が進んでしまうと、脳内の血管の破裂や詰まるといったことが起こります。
- 脳血管の破裂 ・・・ 脳出血
- 脳血管がつまる ・・・ 脳梗塞
いずれの病気も命の危険はもちろん、後遺症などが残ることもあるので非常に怖い病気です。
心臓の病気
心臓が血液をどんどん送り出そうと無理をしてしまうことで、次第に心臓のサイズが大きくなってしまい心臓肥大になります。
やがて進行すれば、心不全が起こります。
また、心臓に取り巻いている「冠動脈」が動脈硬化の進行によって狭くなってしまうことや、完全に閉塞してしまうようになります。
- 冠動脈が狭くなる ・・・ 狭心症
- 冠動脈の閉塞 ・・・ 心筋梗塞
狭心症は胸に突然、痛みなどが起こり圧迫感などを感じるようになります。
症状は長くても数分から15分程度で治まると言われています。
一方の心筋梗塞は、冠動脈が完全に塞がってしまうので血流が途絶えることになります。
するとその部分は壊死してしまいます。
激しい痛みに加えて、呼吸が困難になることや吐き気、冷や汗などの症状が長時間に渡って続きます。
他にも心臓の血管の1つ"大動脈"が裂けてしまう「大動脈解離」など危険のリスクは高まります。
脳も心臓もからだの核となる部分なだけに、高血圧の治療は早めに行うことが大切です。
その他に起こる病気
高血圧の影響は、腎臓にも及んでしまいます。
腎臓は血液をろ過することによって尿を作り出す重要な器官です。
高血圧の影響から動脈硬化が進行してしまうと「腎硬化症」や、さらに進行すると腎臓そのものの機能が低下してしまう「腎不全」に陥ります。
腎臓がきちんと機能しなくなってしまうことで、からだの中に老廃物が排泄されず溜まってしまい人工透析がないと生命を維持することができないからだになってしまいます。
血圧が高くなることは決して良いことではなく、血圧が上昇するにつれて死亡リスクは相対的に高くなることも報告されています。
リスクがもっとも低いのが至適血圧(上が120mmHg、下が80mmHg未満)の人で、もっとも血圧が高いⅢ度高血圧(上が180mmHg以上で下が110mmHg以上)の人が脳心血管疾患で死亡するリスクは比べておよそ10倍にもなると考えられています。
血圧をコントロールするためにもきちんとした治療を受けることが大切です。