発熱
発熱は風邪だけでなく、さまざまな疾患の症状の一つで、正しく治療する必要があります。対処法や原因、種類について解説します。
発熱の一覧
発熱とは
風邪をはじめ、さまざまな疾患の症状として知られる発熱。その種類や程度は多岐にわたります。
微熱のまま自然に治癒することもあれば、解熱剤を用いなければ治療できないほどの高熱になることもあります。また、軽視して放置すると重症化し、治療が長引くケースも少なくありません。
このような事態を回避するためには“ただの発熱”とタカをくくるのではなく、れっきとした症状のひとつとして正しい方法で治療することが大切です。
ここでは、私たちに最も身近な症状のひとつといえる発熱について、その基本情報をまとめてみました。
種類や原因、そして対処法などを紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
発熱の対処法
発熱とはそもそも「生体防御反応」のひとつであり、体内に侵入した病原体を撃退するために白血球が作用して起こります。体温を上げることでウイルスの増殖を抑制し、人体に生じた異常を解消するというのが基本的な役割です。
ちなみに発熱とともに生じやすい“さむけ”は、体温を上げるために筋肉を震わせていることから起こる症状です。
このように、発熱は人体を守るための現象であり、一概に悪い症状とはいえません。
しかし、あまりの高熱を発すると集中力や判断力が低下するほか、倦怠感をはじめほかの症状を招くなど日常生活に支障をきたすことがあります。
また、放置することで体力が消耗され、これがほかの病気を引き起こす原因になることも考えられます。
このような事態を引き起こさないためには、
適切な処置によって早期治療することが大切です。
そこでここでは、発熱した際の対処法をいくつかピックアップしてみました。
解熱剤を利用する
発熱を抑えるために最も効果的な方法が
“解熱剤を用いること”です。
種類によって作用機序はさまざまですが、体温調節中枢(体温上昇の指令を出す器官)に直接作用する、もしくはこの器官を刺激して体温を上昇させようとする酵素の働きを阻害し、解熱します。
特におすすめなのは、体温調節中枢に作用するアセトアミノフェンと呼ばれる成分を含む解毒剤です。
アセトアミノフェンは、正確には「解熱鎮痛剤」にカテゴライズされる医薬品で、発熱を抑えるだけでなく寒気、頭痛なども緩和させる効果があります。
ただし、アセトアミノフェンをはじめとする解熱剤は、副作用が生じる可能性がある点には留意する必要があります。
多くは吐き気や食欲不振、眠気といった軽度なものですが、使用方法や体質などによってごくまれにアレルギー症状のような重度の副作用を引き起こすこともないとはいえません。
万が一、使用後に何かしらの異常が見られる際は、すぐさま医療機関で受診することをおすすめします。
また、服用したにもかかわらず思ったほどの効果を実感できなかったとしても、1回の服用量を増やしたり1日に何回も服用したりしないようにしましょう。
多く使用したからといって効果が増強するわけではなく、むしろ人体に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
体を冷やす
発熱時の対処法として、“体を冷やすこと”は有効です。
この対処法自体は広く知られており、多くの人が実行したことがあるのではないかと思います。
しかしその際に重要なのが、“どの部位を冷やすのか”という点です。
発熱した際、おでこに冷却シートを貼ったり濡れタオルを当てたりする方が多く見られます。
しかし、これはまったく効果がないわけではありませんが、適切ともいえません。
より効果的に解熱するためには、動脈が通っている首筋や脇の下を冷やすといいでしょう。
また、足の血管が集中している太ももの付け根を冷やすのも効果的です。
水分補給
発熱時は体温が上がるため、その分だけふだんより汗が出やすい状態にあります。また、嘔吐や下痢をともなう場合は、水分とともにミネラルも排出されます。そのため、脱水症状を起こしやすい状態といえます。
発熱時は、こまめに水分を補給することを意識しましょう。
特に嘔吐や下痢などの症状も現れている場合は、スポーツドリンクを飲んでミネラルや塩分を補給することも重要です。ただしその場合、過剰に摂取しないように注意する必要があります。ミネラルの体内濃度が上昇しすぎると、逆に脱水症状を引き起こすおそれがあります。
そのほか、コーヒーをはじめ、利尿作用がある飲料はなるべく避けることをおすすめします。排尿回数が増えることで水分がより排出され、脱水症状を招きやすくなります。
発熱の原因
発熱を主な症状とする病気は様々です。
最も代表的で身近なものでいえば風邪ですが、そのほかにも細菌・ウイルスの感染症や自律神経失調症によって生じることもあります。また、ストレスが原因で発熱するケースがあることも確認されています。
そこでここでは、発熱の原因についていくつか紹介しています。
解熱剤を使用したり体を冷やしたりして一時的に解熱することは可能ですが、発熱の原因を根本から解消しなければ再発するおそれがあります。
発熱の原因を突き止め、それに合った方法で正しく治療するために、ぜひチェックしてみてください。
具体的には、「風邪」「感染症」「ストレス」「自律神経失調症」「外傷・熱傷」の5つの原因をピックアップしています。
風邪
子どもから大人まで、幅広い年代によく見られる風邪。
その代表的な症状のひとつに発熱が挙げられます。
風邪の原因は、体内に侵入したウイルスです。ウイルスが増殖することで症状が悪化します。
しかし人間の血液内には白血球が含まれており、外部から侵入してきた異物に対して生体防御反応を示します。異物の侵入を察知した白血球は、撃退するために体温調節中枢に指令を送り、体温を上昇させます。その結果、熱に弱い性質を持つウイルスの増殖を抑制し、死滅させます。
風邪によって発熱が生じるのはこのためであり、いわば人体を守るために起こる現象です。
また、風邪をひいた際にさむけがするのは、体温を上昇させるために筋肉が震えているため。つまり発熱やさむけが生じているということは、白血球がウイルスと戦っていることを意味します。
とはいえ、発熱した状態を放置していると脳の判断力が鈍り、また気怠さが生じることも少なくありません。そのほか、体力が低下することでほかのウイルスに感染しやすくなるおそれもあります。
特に高熱を発した際は、医療機関で適切な治療を受けるなり解熱剤を用いるなりして、早めに解熱することをおすすめします。
感染症
風邪だけに限らず、インフルエンザや中耳炎、膀胱炎といったほかの感染症によって発熱を引き起こすケースも少なくありません。
これらの感染症が原因で起こる発熱も、風邪によって発熱するメカニズムと同じようにして起こります。
体内にウイルスや細菌が侵入すると、血中の白血球がそれを感知。そして病原菌を排除すべく作用します。この作用が一般に言われる「免疫」であり、主に白血球がその役割を担います。
白血球は病原菌を撃退するために数々の物質を生成しますが、そのひとつにインターロイキンというものがあります。これはほかの白血球を刺激して免疫機能を活性化させるほか、脳の血管内皮細胞に作用してプロスタグランジンという物質の生成を促します。
プロスタグランジンは発熱物質とも呼ばれ、体温調節中枢(人間の体温を調節する器官)に作用することで体温を上昇させる役割があります。
これによってふだん以上に体温が上がり、発熱という症状が現れます。
またその際は体温を上昇させるために、筋肉をはじめとする体温調節器官が震えを起こします。
これが俗にいう“
さむけ”です。
つまり、発熱は一見すれば健康を害する症状のひとつに思えますが、実際は白血球が病原菌から人体を守るために欠かせない現象のひとつといえます。
ストレス
“ストレス社会”と呼ばれる現代において、私生活でストレスを感じることは日常茶飯事です。
しかしこのストレスが引き金となり、発熱を引き起こすケースがあります。
風邪をはじめ、感染症による発熱は、病原体による炎症が信号となって白血球が作用し、人体を守るために体温を上昇させることで起こります。
それに比べて心因性の発熱は、そのメカニズムが異なります。
通常、交感神経と副交感神経という2種類の自律神経がバランスをうまく保つことで、私たちの心は安定した状態を保持しています。
しかし外部から過剰なストレスを感じると、それを抑えるために普段のバランスが崩れて交感神経の働きが活発化します。これによって体温が上昇し、発熱します。
心因性の発熱はこのようなメカニズムによって起こることから、感染症による発熱と違って解熱剤による効果を得られないのが厄介なポイントです。
また、病原体による炎症反応が見られないため、原因の特定が困難になりやすい傾向にあるのも大きな特徴として挙げられます。
解熱するためには心の休息を十分に確保しつつ、ストレスの原因を明らかにしたうえでそれを取り除く必要があります。
自律神経失調症
発熱の原因として、自律神経失調症が関係しているケースがあります。
自律神経とは臓器・器官の無意識の働きをつかさどっているものです。たとえば、暑い日に汗をかいたり緊張した際に脈拍が早くなったりというのは、すべて自律神経の働きによって生じている現象です。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、これらが一定のバランスを保つことで私たちの健康状態が維持されています。
しかし、その人の性格や生活環境、外部からのストレスなど何らかの原因によって自律神経のバランスが崩れ、心身の状態が不安定になります。
これによって生じる心身の不調を総称して自律神経失調症といいます。
その症状のひとつに発熱が挙げられます。
夏場は発汗することで体温を下げ、その一方で冬場は体を震わせることで体温を上げるといったように、私たちの体はその時々にあわせて自然に体温調節を行っています。
これは自律神経の働きによるものですが、自律神経失調症になるとこの働きが正常に行われなくなります。それによって、ふだんよりも体温が上昇し、発熱します。
治療するためには自律神経失調症を引き起こしている精神的な要因を特定し、取り除く必要があります。
外傷・熱傷
通常、私たちの体温は脳の視床下部にある体温調節中枢の働きによって、意思に関係なく一定の温度に保たれています。
しかし、交通事故や転倒などによって頭部が外傷を負うと、視床下部が損傷して体温調節中枢が正常に機能しなくなることがあります。その結果、体温が調節されにくくなり、発熱を引き起こします。
そのほか、脳腫瘍をはじめとする脳の疾患が現れている場合も、同じメカニズムによって発熱を引き起こすことがあります。
一方、熱傷(やけど)によって発熱が生じるケースもあります。
熱傷はその深さによって「Ⅰ度」「浅達性Ⅱ度」「深達性Ⅱ度」「Ⅲ度」に分類されます。
そのうち、浅達性Ⅱ度の症状のひとつとして発熱が起こります。
このような外傷・熱傷による発熱は、その原因となった傷を治療することで徐々に解消できます。
とはいえ治療には外科手術を必要とするケースが多いので、万が一の場合はすぐさま受診し、適切な処置を取るようにましょう。
熱の種類
“発熱”というと一般的に風邪やインフルエンザなど、病気によって起こる症状のひとつと思っている方が多いのではないかと思います。
しかし厳密に言えば発熱には2種類あり、病気による「発熱」と外的環境因子による「うつ熱」に分類できます。いずれも“体温が上昇する”という点では同じですが、その原因やメカニズムはまったくと言っていいほど異なります。
もちろん、それにあわせて対処方法も異なります。発熱した際はまず「発熱」なのか「うつ熱」なのかを判断し、それに合った方法で適切な処置を取ることが大切です。
そこで、ここでは「発熱」と「うつ熱」についてそれぞれ解説します。
発熱
日常生活において一般的に言われる“発熱”とは、主に病気や外傷を原因とする体温の上昇を指します。
すでに発熱の原因として風邪や感染症、ストレス、自律神経失調症、外傷・熱傷を紹介しています。
防御機構である白血球が体内に侵入した異物を撃退するために体温を上昇させる、もしくは人間の体温を調節している体温調節中枢に異常が生じたために体温が上昇するという状態です。
いわば、体の内側から熱を発している状態であるともいえるでしょう。
体内に熱がとどまり、放熱しないというのが特徴のひとつであり、手足のような抹消部分はむしろ低温となっています。
このような病気による発熱を抑えるためには、
解熱剤を用いて体温調節中枢に作用する物質を阻害したり心因的要因を取り除くことで自律神経を安定させたりするのが有効です。
また、同時に体の緊張を解くのも発熱を解消するための方法として有効とされています。筋肉の緊張をほぐし、抹消部の血管を拡張することで放熱が促進されます。
「熱が出たときはぐっすり寝るのが良い」といわれるのは、そのような体のメカニズムがあるからです。
ただし、発熱した原因にあわせて適切な処置を取る必要があります。
たとえば、心因性の発熱に対して解熱剤を用いてもその原因を取り除くことはできず、解熱効果は得られません。発熱の原因を明確にしたうえで、それに合った方法で対処しましょう。
うつ熱(高体温症)
病気などによる「発熱」とは異なり、外的な要因による体温上昇を 「うつ熱」といいます。
人間の体内には体温調節機能が備わっています。体内の熱が一定以上に上昇した際は、この機能の働きによって放熱し、体温を平常時の状態に整えます。
しかし、外部からの熱量があまりに多いと体温調節機能が正常に働かなくなり、放熱がスムーズに行われなくなります。その結果、体内に熱がこもり、体温が上昇します。
具体的には、「衣服を何枚も重ね着する」「暖房器具の近くで作業をする」「通気性が悪い密閉空間に身を置く」といったことで体温が上昇している状態が挙げられます。
たとえば、「熱中症」がわかりやすい例として挙げられるのではないかと思います。
夏場に多く見られる熱中症は長時間、気温や湿度が高い環境に身を置いたり日差しを浴びたりすることで起こります。
体温調節機能が正常に作用しているうちであれば、発汗や放熱によって体温がコントロールされます。
しかし、上記のような原因によって体温調節機能に異常が生じると、発汗や放熱による体温管理がスムーズに行われなくなります。
その結果、体温の過度な上昇によって脳や神経に悪影響が及び、頭痛や吐き気、失神といった症状が現れます