狭心症とは
心臓はポンプのように血液を送り出すことで、からだに酸素や栄養を循環させています。
もし、心臓が止まってしまうとどうなるのでしょうか。
脳や筋肉、その他の臓器に酸素や栄養が供給されなくなり、命にも危険が及ぶことになります。
人が生きていく上で、心臓はとても大事な器官なのです。
そのため心臓の働きに支障をきたしてしまう心疾患(心臓病)は、命を落とすリスクもあることに注意しなくてはなりません。
狭心症は、そんな心疾患の1つです。
胸の痛みや息切れなどの症状が現れますが、悪化すれば心筋梗塞へと発展することもある怖い病気です。
狭心症の治療方法
狭心症の治療方法は、大きく3つに分かれます。
以下では、それぞれの治療方法についてご紹介していきます。
薬の服用
狭心症を治療するためには、生活習慣の改善だけではなく薬の服用も必要です。
代表的な狭心症治療薬は、"硝酸薬"という種類の薬になります。
中でも成分ニトログリセリンを含有した舌下錠は、発作が起きた時に用いることで症状を楽にしてくれます。
その他にも「発作を予防する薬」や「動脈硬化を改善する薬」なども使用されます。
生活習慣の改善
健康に良くない生活習慣が積み重なり、動脈硬化が進むことで発症するのが狭心症です。
そのため狭心症を治療する上で基本となるのは、やはり生活習慣の改善です。
狭心症は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病があると発症リスクは高まってしまいます。
毎日の食事、特に塩分や糖分、脂肪分などを摂りすぎないようにしてバランスのよい食事を心がけましょう。
他にも次のようなことに注意すると、狭心症の改善や予防につながります。
- タバコを吸っている方は禁煙する
- お酒を飲みすぎない
- ストレスを溜めないように心がける
- 適度に運動する
など
意外にも、運動は狭心症の治療に有効です。
激しい運動は発作を起こしかねないため避けるべきですが軽い運動、例えばウォーキングなどは血流を良くする効果があります。
病院での治療
生活習慣の改善や薬の服用だけで狭心症が良くならなかった場合は、病院での治療が検討されます。
その方法は、主に"カテーテル治療"か"バイパス手術"の2種類に分かれます。
まずカテーテル治療は"カテーテル"という細い管を挿入して、狭くなった冠動脈を内側から拡げる治療法です。
カテーテルの先端にはバルーン(風船)がついており、そのバルーンを膨らませることで冠動脈を拡げます。
その他、バルーンに加えて"ステント"という金属の筒がついたカテーテルも使われます。
ステントは内側から血管を補強するための道具で、薬剤でコーティングされたものが用いられます。
次にバイパス手術はからだの他の部分にある血管を用いて、狭くなった冠動脈の先に接続する手術法です。
新しい血液の通り道(バイパス)が作られることになるので、手術が成功すれば狭心症を一気に改善することができます。
ですが術後に脳梗塞を発症することがあるなどのリスクもあります。
狭心症の症状
狭心症の代表的な症状は、「発作」です。
しめつけられる、圧迫されるというような胸の痛みが普通は1~2分、長いと15分ほど続きます。
また発作の現れ方などによって"安定狭心症"と"不安定狭心症"の2種類に大きく分かれます。
ここからは、それぞれの種類についてさらに詳しく解説します。
安定狭心症
発作が起こるタイミング・時間や発作の強さがある程度決まっている場合を、安定狭心症と呼びます。
安定狭心症には、さらに2つのタイプがあります。
■労作性狭心症
階段を上がる時、または力仕事をする時などからだを動かすタイミングに発作が現れる場合を、労作性狭心症と呼びます。
からだを動かす時には心臓にも負荷がかかりますが、狭心症を発症しているとこの時に心臓へと十分な血液が送られないため発作が起こってしまいます。
■安静時狭心症
安静時狭心症はじっとしている時、特に夜中~明け方など睡眠中に発作が現れます。
ほとんどの場合は血管にけいれんが起こっていて、血液が流れにくくなることが発作を起こす原因となります。
そのため"攣縮(れんしゅく)性狭心症"と呼ばれることもあります。
不安定狭心症
発作の回数が増えて、からだを動かす時だけでなく安静にしている時にも症状が現れてしまう場合を、不安定狭心症と呼びます。
心筋梗塞にも発展しやすく、危険な状態です。
多くの場合は入院治療が必要となります。
狭心症の原因
狭心症の原因は、大きく言うと「心臓に起こる動脈硬化」です。
心臓は全身に血液を送り出すポンプのような器官とよく表現されることがあります。
ですが実際には、血液を送るだけではありません。
心臓から送り出された血液は全身をめぐって、再び心臓に戻ってきます。
そして心臓に戻ってきた血液は再び全身に送られるというように、常に血液はからだの中を循環しているのです。
ですが、心臓に血液を供給している"冠動脈"に動脈硬化が起こると、狭心症を発症してしまいます。
血管が狭くなることで、心臓にうまく血液が送られなくなってしまうのです。
それでは、動脈硬化はどのようなことが原因で起こるのでしょうか。
大きく関わっているのは、生活習慣と言われています。
そもそも動脈硬化は加齢にともなって進んでいきますが、年をとることは避けられません。
しかし動脈硬化は他にも、生活習慣による影響も大きいのです。
もちろん生活習慣の乱れはからだに毒ですが、動脈硬化には特に、次に挙げる5つの要因が重要です。
例えば脂質異常症は、体内のコレステロール値が高くなったりする生活習慣病です。
すると血管の中にもコレステロールが溜まってしまい、血管が狭くなることで狭心症の原因になります。
また肥満の方の場合は血管の中に脂肪が溜まるだけではなく、他にも糖尿病や高血圧などを発症しやすくなるというように2重のリスクを秘めているのです。
これら5つの要因は、どれも動脈硬化を進行させてしまう危険因子と言われています。
動脈硬化を防ぎ、狭心症を予防するためにもこのような危険因子を減らしていきましょう。
狭心症と心筋梗塞
狭心症や心筋梗塞は、まとめて"虚血性心疾患"と呼ばれます。
心臓の血管、つまり冠動脈に起こる動脈硬化が原因になるのが狭心症でした。
心筋梗塞も同じく冠動脈の動脈硬化が引き金となりますが、狭心症と心筋梗塞では血管の状態に違いがあります。
- 冠動脈が狭くなる → 狭心症
- 冠動脈が詰まる → 心筋梗塞
血液が流れにくい状態の狭心症に対して、心筋梗塞の場合だと血流が途絶えてしまいます。
すると血液が流れなくなるので心筋(心臓の筋肉)が壊死し、心臓は動かなくなります。
そのため心筋梗塞の方が症状は重く、最悪の場合は命にも関わるのです。
また狭心症の状態から心筋梗塞へと発展することもあるので、油断はできません。
症状の現れ方などに違いがあるので、心筋梗塞の恐れがある時はすぐに救急車を呼びましょう。
■狭心症の場合
- 運動時、また安静時に胸の痛み
- 約数十秒~10分ほどで治まる
- 硝酸薬が効く
■心筋梗塞の場合
- 強い胸の痛みが冷や汗や吐き気、恐怖感などと共に現れる
- 30分経過しても治まらない
- 硝酸薬が効かない