エストロゲン(卵胞ホルモン)のエチニルエストラジオールとは
エチニルエストラジオール(Ethinylestradiol) とは
エチニルエストラジオールは、避妊薬(低用量ピル)に含まれる有効成分。用法用量を守って正しく服用することで、望まない妊娠を防ぐことができます。具体的には、卵胞モルモン(エストロゲン)と同じ働きをすることで上記のような効果を発揮します。
「卵胞ホルモン剤」と呼ばれることがあるのはそのためです。
ここでは、そんなエチニルエストラジオールについて、より詳しい効果について、また実際にこの成分を含んでいる経口避妊薬(低用量ピル)の情報についてもまとめています。
エチニルエストラジオールの効果
エチニルエストラジオールは、人間の体内で分泌される女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)と同等の働きを持つ成分です。
エストロゲンには女性らしく丸みを帯びたみずみずしい体を作り出す、といった効果があります。
そして同時に、エストロゲンは女性の子宮を妊娠に適した環境に整える働きがあります。受精卵が子宮に落ち着き(着床)、順調に細胞分裂を繰り返して成長できるような環境を作ります。
要するに、エストロゲンと同等の働きを持つエチニルエストラジオールを服用することで、簡単にいえばすでに妊娠している状況を子宮内に作り出す効果があるわけです。
継続的に服用することで排卵を抑制し、避妊効果をもたらします。
また、エチニルエストラジオールを含む医薬品は「生理痛がひどい」などの月経困難症に対しても効果を発揮します。月経困難症は女性ホルモンのバランスが乱れていたり、月経の際に子宮を収縮させるプロスタグランジンと呼ばれる物質が過剰に生成されたりするために起こるとされています。
エチニルエストラジオールを含む医薬品を服用することで、女性ホルモンのバランスを整えてプロスタグランジンの生成を抑制し、月経困難症を解消します。
エチニルエストラジオールの副作用
エチニルエストラジオールを含んだ医薬品の副作用には、軽度のもの、重度のものが存在しています。
軽度な副作用としては、以下のようなものが挙げられます。
・吐き気
・嘔吐
・食欲不振
発生確率は0.1~5%ほどで、決して高いものではありません。
また、服用を続けることで徐々におさまっていきます。「いつまでも収まらない」という場合には吐き気止めを一緒に飲む、別の成分を使った薬に変えるなどして対処しましょう。
一方、重度の副作用として報告されているものに、血栓症があります。
発生頻度は不明ですが、血栓症を発症すると四肢や肺、心臓、脳、網膜の異常に始まり、痺れや疼痛、急激な息切れ、胸や頭への激しい痛み、四肢の脱力や麻痺、急性視力障害といった症状が出るようになります。これらの症状が現れた際に放置をしていると、血栓が脳や心血管内部でつまり、更に深刻な事態を招く恐れがあります。
そのため、エチニルエストラジオールを含む医薬品を服用した際、何かしらの異変が現れた際にはすぐさま使用を中断し、医師による診察と処置を受けるようにしましょう。
エチニルエストラジオールを含む医薬品
有効成分としてエチニルエストラジオールを含む医薬品、主に経口避妊薬(低用量ピル)は多数あります。
錠剤を服用する内服薬タイプや、体に貼るパッチタイプの医薬品など、種類はさまざまです。
ここでは、それらの医薬品についてまとめました。
トリキュラー
トリキュラーは有効成分にエチニルエストラジオール、そしてレボノルゲストレルを使用した低用量ピルです。
低用量ピルの中でも副作用が発生しにくく、体にかける負担を少なくしながら服用できるというメリットがあります。
しかしその分、「服用の際に順序を間違えない」「飲み忘れを起こさない」などの注意が必要となります。
使用効果としては、避妊効果、月経困難症、月経前症候群、子宮内膜症の治療・軽減効果が挙げられます。女性の体に関する幅広い悩みを改善できる薬といえるでしょう。
ヤーズ
ヤーズは、低用量ピルよりも成分量が少ない「超低用量ピル」と呼ばれる医薬品です。
有効成分にエチニルエストラジオール、ドロスピレンを含んでいます。
ヤーズなどの超低用量ピルは、主に月経困難症など生理機能の改善を主目的としています。
また、ホルモンバランスを整えることで大人ニキビの発生を防ぐという効果も期待できます。
成分量が少ないので副作用が起きにくい点もポイントといえます。
マーベロン
マーベロンはエチニルエストラジオール、デゾゲストレルを有効成分とする医薬品です。
マーベロンの特徴としては、ホルモンバランスの乱れによって発生するアゴ周りのニキビ、いわゆる大人ニキビと呼ばれるニキビの解消効果など、美容面での作用が強いということが挙げられます。
ホルモンバランスを整え、体付きを今よりも美しくするためにマーベロンを服用しているという方も少なくありません。
ダイアン35
ダイアン35は有効成分としてエチニルエストラジオール、酢酸シプロテロンを配合した低用量ピルです。
避妊効果とともに美肌効果があり、マーベロンと同じく「大人ニキビによく効くピル」のひとつとして知られています。
また、より女性らしいボディラインを形作る、バストアップ効果をもたらすといったことが期待できる点もポイントです。数多くの医薬品を世に送り出しているドイツの製薬会社・バイエルが開発しているというのもポイントのひとつといえます。より安心感をもって使用することができるでしょう。
エラワン
エラワンは、継続的に服用することで避妊効果をもたらす一般的な低用量ピルではなく、緊急避妊薬(アフターピル)として開発された医薬品です。
有効成分は、ウリプリスタール酢酸エステル。120時間以内に服用することで、コンドームが破れるなどの“事故”が起きた場合でもしっかり対処することができます。
一般的なアフターピルが「72時間以内」とされているのに対して、120時間と期間が長いのがポイントです。
もしものことが起きた場合のために、持っておくと安心感を得ることができます。
セラゼッタ
セラゼッタは「ミニピル」と呼ばれるタイプの経口避妊薬で、含有される有効成分はデソゲストレルです。
エチニルエストラジオールは含まれておらず、デソゲストレルによる「排卵抑制」「精子侵入防止」といった働きによって受精卵ができるのを防ぎ、避妊を成功させます。
エチニルエストラジオールは副作用が起きにくいという点がポイントといえますが、まったく起きるリスクがないというわけではないので注意が必要です。
ヤスミン
ヤスミンは、バイエル社製の低用量ピル。排卵を抑制するとともに精子の侵入を抑え、避妊を成功させる効果があります。ホルモンバランスの変化を最小限に抑えることができるので、別のピルでは副作用が少々気になったという方も安心して使用することができます(とはいえ、まったく副作用が出ないというわけではありません。異常が見られ、気になる場合は医師に相談しましょう)。
また、女性ホルモンの分泌量が低下することによって起こる更年期障害に対しても有効であるといわれているのがポイントです。
メリアン
メリアンは、エチニルエストラジオールの含有量が少ない「超低用量ピル」のひとつです。
「低用量ピルは副作用が強い」という方は、こちらに乗り換えることでより副作用に悩まされずに避妊を成功させることができます。また、メリアンは美容効果も期待できるとされています。特に大人ニキビを抑えたいという女性に人気があるようです。
とはいえ、副作用がまったくないことを意味するわけではありません。飲みはじめの段階で吐き気や乳房のハリなどが現れることがあります。
エブラ避妊パッチ
エブラ避妊パッチは、文字通り肌に貼るパッチタイプの医薬品です。ジョンソンエンドジョンソン社が製造・販売しています。エチニルエストラジオール、ノルエルゲストロミンを有効成分として含有し、パッチを貼ることで体内に取り入れられて避妊効果を発揮します。
1週間ごとの貼り換えでOK、水にぬれてもはがれにくいという特徴を持っています。
「錠剤タイプのピルは苦手」という方にとって、便利なアイテムといえるでしょう。
エチニルエストラジオールのジェネリック
エチニルエストラジオールを含有する医薬品の中には、ジェネリック(後発医薬品)と呼ばれるタイプの製品もたくさんあります。
さまざまな製薬会社が開発した先発薬のあとで、同じ有効成分を使って別の製薬会社が製造する医薬品のことをジェネリックと呼びます。先発薬に比べて開発コストが抑えめになっている分、市場に出る際の価格も抑えられているというのが特徴です。
マーシロン
マーシロンはオルガノンが製造するマーベロンのジェネリックです。
ただし、単純に同じ有効成分を使っているというわけではありません。オルガノン社はマーシロンを製造するにあたり、有効成分の含有量を少なめにして「超低用量ピル」としています。
マーシロンは、通販サイトにて1箱21錠入が2,100円前後、3箱で6,000円前後、6箱で10,000円前後の価格で販売されています。
「マーベロンでは副作用がきつかった」という場合には、こちらを選ぶことをおすすめします。
フェミロン
フェミロンはMSD社が製造・販売する超低用量ピルで、エチニルエストラジオールの含有量は1錠あたり0.02mgとなっています。1シートあたり21錠含んでおり、飲みきったあとは7日間の休薬期間を設けたあとで再び新たなシートのフェミロンの服用を開始する……という飲み方をする必要があります。
フェミロンはマーベロンと同じ成分を配合していますが、マーベロンより成分含有量が少ない超低用量ピルで、副作用が抑えめとなっています。ただし人によっては胸のムカつき、頭痛などが起こる可能性があるので注意が必要です。
ロエッテ
世界的な製薬会社ファイザーが製造・販売を手がける超低用量ピルで、トリキュラーのジェネリックとして開発されました。
1箱につき21錠入りシート1枚で、1箱の価格は2,000円前後。ジェネリックの中でもより安価であるというのが特徴です。
1シート21錠で、飲みきったあとは7日間の休薬期間が必要ですが、人によってはこのとき薬を飲む習慣が体から抜けて次の服用開始を忘れてしまうという場合があるようです。
飲み忘れがないよう注意する必要があるといえるでしょう。
オブラル-L
オブラル-Lは旧ワイス(現ファイザー)が製造する低用量ピルです。
トリキュラーのジェネリックとして開発されました。
シートには白く小さな丸い錠剤が21錠並んでいます。
「21日間服用、7日間休薬」というサイクルで服用を続けることで、高い避妊効果を発揮します。
日本では未認可のため病院で処方してもらうことができませんが、通販サイトを利用することで購入できます。価格の目安は1箱21錠で1,200円前後で、先発薬トリキュラーよりも安い価格で入手することが可能です。
ジネット35(ダイアン35)
ジネット35はインドのシプラ社が製造する低用量ピルです。
バイエル社製の低用量ピル「ダイアン35」のジェネリックで、服用時にはダイアン35と同様、優れた避妊効果やニキビ治療効果、美容効果を発揮します。
休薬期間が必要な21錠シートとなっており、価格の目安は1箱(21錠)1,500円前後です。
ヤミニLS(ヤーズ)
ヤミニLSは製薬会社ルピンが製造した月経困難症の治療薬で、超低用量ピル「ヤーズ」のジェネリックとして開発されました。使用時にはヤーズと同様、月経困難症をはじめとする女性ホルモンの影響で発症する症状の治療に大きな力を発揮してくれます。
販売価格は1箱24錠入りで約1,900円、3箱72錠入りで約5,100円、6箱144錠入りのものが約9,000円となっています。ヤーズと比べて価格が非常に安く、少ない負担で月経困難症の改善などが可能となっています。
エチニルエストラジオールの作用機序
女性が妊娠するためには、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが分泌される必要があります。
これらのホルモンによって、卵巣内の卵胞(卵子を貯蔵している器官)が刺激され、成熟して排卵を行い、また子宮内の環境を妊娠できる状態に整えます。
また、子宮内膜を分厚くして受精卵が着床しやすくするというのが主な働きです。
脳の視床下部が体の状況を察知してホルモン分泌の命令を出し、以上のようなことが起こります。
そして、そこにタイミングよく精子が放出されたところで受精卵ができ、妊娠が起こるわけです。
とはいえ、性行為はしても妊娠は避けたいと考えているカップルも少なくありません。
そこで登場するのが、エチニルエストラジオールというエストロゲンと同じ働きを持つ成分が含まれている経口避妊薬(ピル)です。製品によってさまざまですが、経口避妊薬には、エチニルエストラジオールとは別にプロゲステロンと同じ働きをする成分が含まれています。
ピルを服用することで、脳の視床下部は「エストロゲンやプロゲステロンがすでに存在する=妊娠に必要な条件を整える必要がない」と判断します。エストロゲンやプロゲステロンの分泌を抑え、排卵を抑制します。
こうして、避妊を成功させることができるのです。
エチニルエストラジオールの併用禁忌薬
エチニルエストラジオールを服用する上で併用を禁止されている医薬品には、「ヴィキラックス」という医薬品が挙げられます。
ヴィキラックスはC型肝炎の原因となる「ジェノタイプ1型ウイルス」を駆除する抗ウイルス薬です。
ヴィキラックスとエチニルエストラジオールを併用すると、肝機能を示す値であるALT(GPT)という数値が上昇し、肝機能障害を引き起こす危険性があることが判明しています。
そのため、ヴィキラックスとの併用は厳禁となっています。
ピルを服用しつつヴィラキックスをどうしても使用しなければならないという場合には、エチニルエストラジオールの摂取をやめ、2週間以上期間をあけてからヴィラキックスの服用を始める必要があります。
エチニルエストラジオールの併用注意薬
エチニルエストラジオールと併用する際に注意が必要となる医薬品は数多くあります。
・副腎皮質ホルモン
・三環系抗うつ剤
・エフピー
・サンディミュン
・テオドール
・オメプラール
これらの医薬品が併用注意薬に指定されているのは、エチニルエストラジオールとの併用によって、これらの医薬品の効果が強くなりすぎる可能性があるためです。
効果が強くなり、その分だけ副作用が現れる確率が高まるため、併用には注意が必要です。
・リファジン
・バルビツール酸系製剤
・ヒダントイン系製剤
・テグレトール(リンク先はテグレトールのジェネリックです)
・トラクリア
・モディオダール
・トピナ(リンク先はトピナのジェネリックです)
以上の医薬品と併用した場合、エチニルエストラジオールの代謝速度が早まって効果が弱まる、もしくは不正出血発生のリスクを高める可能性があるとされています。
・アクロマイシン
・ビクシリン
以上の抗生物質はエチニルエストラジオールの作用を弱める、不正出血を発生させるリスクを高める恐れがあります。
・ラミシール
ラミシールとエチニルエストラジオールを併用した場合、月経異常が発生する恐れがあります。
・インスリン製剤
・スルホニル尿素薬
・スルフォンアミド系製剤
・ビグアナイド系製剤
いずれも血糖値を下げる働きがある糖尿病治療薬ですが、エチニルエストラジオールと併用することにより、血糖降下作用が弱まる恐れがあります。
以上、ここでは5つのブロックに分けて解説していますが、ほかにもエチニルエストラジオールとの併用に注意すべき医薬品はいくつかあります。
現在、何らかの病気を治療中という方は病院で医師に相談するなどして安心安全に服用していきましょう。