緑内障とは
緑内障とは視神経に障害が起こってしまう、目の病気です。
年齢とともに患者数も増えていき、厚生労働省の調査によると40歳以上の日本人においては約5%、つまり20人に1人が緑内障を発症していることが分かっています。
しかも、5%の患者さんの中で「自分が緑内障である」ことに気付いていたのは約1割程度でした。
緑内障は自覚症状が少ないため、発症に気づきにくい病気なのです。
また、国内における失明原因の割合は次のようになっています。
第1位 緑内障 … 24.6%
第2位 糖尿病網膜症 … 20.0%
第3位 網膜色素変性症 … 13.7%
緑内障は気づきにくいだけでなく、悪化すると視力を失うこともあるのです。
しかし近年では医学も発達し、緑内障による失明のリスクを下げることも可能になりました。
ここでは緑内障について症状や原因、治療方法などを解説していきます。
緑内障の治療方法
緑内障を発症し、圧迫された視神経は少しずつ傷ついていきます。
ダメージを受けた視神経を回復させることはできないため、現代の医学では緑内障を完治させることはできません。
しかし眼圧を下げることで症状の進行を食い止めたり、遅らせることは可能です。
緑内障の治療方法には、主に3種類があります。
以下ではそれぞれの治療方法について、順番に解説していきます。
薬物療法
薬物療法は、緑内障を治療するための基本となる方法です。
現在国内で使用されている緑内障治療薬には様々な種類があり、薬によっては点眼薬(目薬)や飲み薬など剤型も異なります。
眼圧を下げる効果がある緑内障治療薬を使用することで症状の悪化を防ぎ、視神経を保護することができるのです。
レーザー治療
緑内障の治療方法は薬を用いるだけでなく、レーザー治療もあります。
その名前の通りにレーザーによる治療なので、メスをいれることもありません。
レーザー治療には、2種類があります。
- 選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
- レーザー虹彩切開術(LI)
患者さんの緑内障の種類により、どちらのレーザー治療がおこなわれるかが変わってきます。
しかしどちらにしても痛みは少なく、治療も5~10分ほどで終了すると言われます。
手術
薬物療法やレーザー治療でも効果が得られなかった場合は、手術をおこないます。
緑内障に対する手術法は様々で、人によっては白内障手術が有効な場合もあります。
手術にかかる時間は約30~60分程度であり、手術法によっては日帰りも可能です。
ただし難しい手術の場合は1~3週間ほどの入院も必要になります。
また緑内障の手術に関する技術は年々向上し、それにともなって眼圧を下げる効果も高まってきていると言われます。
しかしそれでも手術後に再び眼圧が高まってしまうこともあり、その時は再手術が必要になる可能性もあります。
緑内障の症状
緑内障はゆっくりと進行していくことが多い病気ですが、時折短い期間で症状が悪化する場合もあります。
ここでは"慢性的緑内障"と"急性緑内障"の2種類に分けて症状を解説します。
慢性的緑内障の症状
緑内障の患者さんの約8割は、症状がゆっくりと進む慢性的緑内障だと言われています。
慢性的緑内障の典型的な症状は、「視野欠損」となります。
視野欠損とは文字通り、モノの見える範囲(視野)が狭くなっていく症状のことです。
進行すると、日常生活の中で次のように感じることが多くなります。
- モノが見えにくい、かすむ
- 視野の一部がぼやける
- 距離感が取りづらく、つまずいたりする
- 人にぶつかることが増えた
など
しかし慢性的緑内障は自覚症状がほとんど無いまま少しずつ、少しずつ進行していくことが普通です。
そのため気付いた時にはかなり悪化していた、ということもあります。
緑内障を発症し始める40代を迎えたら、自覚症状は無くとも定期的に眼科検診を受けましょう。
また慢性的緑内障では目の症状の他に、頭痛や肩こりが生じることもあります。
急性的緑内障の症状
緑内障が急激に進行してしまった場合のことを、急性的緑内障と呼びます。
ゆっくりと悪化していく慢性的緑内障と比べると、次のように激しい症状が現れます。
など
これらの症状は「目以外の病気」に間違われることも多く、眼科への受診が遅れることもあるので注意してください。
緑内障の原因
緑内障の原因は、簡単に言うと「視神経に異常が起こること」です。
それではなぜ視神経に異常が起こるのかと言うと、それには"房水"と"眼圧"というものが深く関わっています。
まず房水とは、眼球の中を流れている液体のことになります。
房水は目に必要な栄養の運搬などをおこなっていて、眼球の中を循環しています。
そのため房水が流れることにより「眼球の内から外」に対して圧力がかかっており、この圧力のことを眼圧と呼びます。
緑内障は何らかの原因で眼圧が高くなることで視神経が圧迫され、モノが見えにくくなったりするのです。
しかしなぜ眼圧が高くなるのか、その詳しい要因はいまだに分かっていません。
また眼圧が正常値を超えた場合でも症状が現れないこともあり、このような場合は"高眼圧症"と呼ばれます。
緑内障になりやすい方
緑内障の詳しい原因は解明されていないものの、「どのような方が緑内障になりやすいか」ということは分かってきています。
まず緑内障は、遺伝的な要因や加齢により発症のリスクが高まります。
年齢を重ねることで誰でも発症することがあり、特に家族や親戚に緑内障の方がいる場合はその可能性が高まってしまいます。
また緑内障には、次のような生活習慣も関わっています。
- 運動不足
- コーヒーやお酒を飲むことが多い
- ストレスが多い
- うつむいた姿勢でいることが多い
など
これらの生活習慣は、眼圧を上昇させるため緑内障が生じやすくなります。
そのため普段の生活を見直すことも、緑内障の予防につながります。
緑内障の種類
緑内障は、「どのように眼圧が上昇していくのか」により5種類に分かれます。
- 原発開放隅角緑内障
- 原発閉塞隅角緑内障
- 発達緑内障
- 続発性緑内障
- 正常眼圧緑内障
以下では、それぞれの種類について簡単にご紹介します。
原発開放隅角緑内障
眼球の中に房水が流れているということは、さきほど解説した通りです。
房水は眼球の中を循環し、"線維柱帯"と呼ばれる部分から流れ出ていきます。
原発開放隅角緑内障とは、線維柱帯に目詰まりが起こることで生じる緑内障です。
房水が眼球の中から出ていきにくくなるため溜まってしまい、眼圧が高まることで視神経が少しずつ圧迫されるようになります。
ちなみに原発は「他の病気が原因ではない」、隅角には「房水が出て行く場所」を表す言葉です。
原発閉塞隅角緑内障
房水の出口である隅角が狭くなり、最終的には完全に塞がってしまうのが原発閉塞隅角緑内障です。
原発閉塞隅角緑内障は急に隅角が閉じてしまうこともあり、このような場合には急性緑内障を発症し激しい症状が現れてしまいます。
発達緑内障
発達緑内障とは、生まれつき眼圧が高い場合に発症するタイプの緑内障です。
隅角に先天性の異常があることが原因となります。
また生まれたばかりの子供はからだが未発達であり、眼圧が高いと眼球が大きくなってしまう(牛眼)こともあります。
乳幼児期の緑内障は進行しやすく、その後に障害が残るおそれもあるため早めに治療をおこないます。
続発性緑内障
何らかの病気などが引き金となって生じる緑内障を、続発性緑内障と呼びます。
続発性緑内障の原因には様々な種類があるため、ここでは一例をご紹介します。
- 目のケガ
- 白内障
- ぶどう膜炎
- 糖尿病
- ステロイド点眼薬の使用
など
続発性緑内障の患者さんの場合は、まず原因からしっかりと治療していく必要があります。
正常眼圧緑内障
緑内障とは通常、眼圧が高くなることで起こる病気です。
しかし眼圧が正常な値でも緑内障を発症することがあり、このことを正常眼圧緑内障(NTG)と呼びます。
国内における緑内障の患者さんでは約6割、半分以上が正常眼圧緑内障だと言われています。
正常眼圧緑内障にかかりやすくなる要因としては遺伝、強い近視などが挙げられます。
また、あるいは低血圧や冷え症の方なども正常眼圧緑内障のリスクが高まるので注意が必要です。
緑内障のセルフチェック
緑内障は自覚症状が少なく、発見が遅れることも多い病気です。
しかし自宅にあるカレンダーを使うことで、簡易的なセルフチェックをおこなうことができます。
カレンダーチェック法は、次のような手順でおこないます。
- 片目を手で覆う
- もう片方の目で、カレンダーの中心にある数字(15など)を見る
- 見ている方の目を動かさずに、カレンダーの数字を順番に確認していく
- 同じような流れを、反対の目でもおこなう
この時に見えない数字があった場合は、緑内障により視野が欠けているかもしれません。
気になる方は、すぐに眼科検診を受けることをオススメします。