虫歯
虫歯は国民病と呼ぶこともできる歯の病気です。悪化すると歯を失うことにも繋がるので早期治療、また予防をすることが大切です。
虫歯の一覧
虫歯とは
これまでに多くの人が一度は経験しているであろう、虫歯…。
2011年に厚生労働省がおこなった調査によると、5歳以上の日本人の中で約85.7%もの方が虫歯にかかったことがあるという結果が判明しました。
実に約1億人もの方が虫歯に悩んだことがあるという計算になり、まさに国民病と呼ぶこともできます。
虫歯は医学的には"う蝕"や"う歯"などとも呼ばれ、口の中に住み着いた虫歯菌によって歯が溶かされてしまいます。
悪化してしまうと歯を失う原因にもなり、歯周病と並んで歯科の2大疾患に数えられています。
しかし歯磨きをすることで予防もできるため、毎日しっかりと歯を磨くことが大切です。
ここでは虫歯の原因や症状を解説した上で、歯の健康を保つための予防法や治療法などをご紹介します。
虫歯の症状と治療方法
虫歯ができると最初に歯の表面が溶かされ、その後少しずつ奥深くまで菌が侵入してしまいます。
そのためどんな症状が起こるかを解説する前に、まずは人の歯の構造について簡単にご紹介します。
人の歯は、口の中で露出している"歯冠"と歯茎の中に隠れている"歯根"という2つの部分に大きく分けられます。
また人の歯の構造は、大まかに見ると外側から次のような構造で作られています。
エナメル質 → 象牙質 → 歯髄(神経)
虫歯は進行性の病気で、放置してしまうと歯の表面にあるエナメル質から神経まで症状が及んでしまうのです。
その進行度により5段階に分けられ、それぞれの段階における症状や治療方法は次の通りになります。
C0:初期虫歯
歯の表面が少し溶かされた状態で、まだ穴は空いていません。
白、または茶色く濁って見えることもあります。
この段階では痛みなどは無く歯磨きをしっかりとおこなったり、フッ素を歯に塗ることで進行を食い止めることが可能です。
C1:エナメル質の虫歯
歯の表面にあるエナメル質が溶かされ、穴が空いた状態です。
痛みなどの症状はほとんどありません。
この段階では虫歯の部分を削り、詰め物をして治療をおこないます。
まだ初期症状なので麻酔を使う必要もなく、治療回数も少なく済ませることもできます。
C2:象牙質まで進行した虫歯
虫歯がエナメル質の下にある、象牙質まで進行した状態です。
冷えた飲み物やアイスが歯に染みるなど、知覚過敏に似た痛みを感じることもあります。
治療の際は虫歯を削って詰め物をしますが、症状によっては麻酔を使うこともあります。
C3:神経まで進行した虫歯
虫歯が神経まで進行した状態です。
何もしなくても激しい痛みが続き、また膿が溜まることもあります。
神経の生死によって過程は異なりますが、治療の最後には被せ物をします。
C4:歯根だけが残った虫歯
虫歯が進行し、歯冠部が崩壊してしまった状態です。
この段階では神経が死んでしまっているため、もはや痛みを感じなくなる場合もあります。
しかし痛みがないからといって当然虫歯が治ったということにはならず、放置すると全身の健康を損なう恐れもあります。
歯を保存することも難しいため抜歯をして、入れ歯やインプラントなどの治療をおこなうことが多いです。
虫歯の予防法
"予防歯科"という言葉があるように、虫歯は「できてから治療をする」のではなく「できないように予防する」ことが大切です。
虫歯を予防するためのポイントは、次の2つがあります。
- 歯磨き
- 食生活
それぞれの予防法について、さらに詳しく解説します。
歯磨き
虫歯を予防するための一番のポイントは、やはり歯を磨くことです。
歯にくっついたプラークはうがいでは取り除くことができず、歯ブラシでこすり取らなくてはなりません。しかし、ただ歯を磨くだけでは磨き残しが生じることも多いので、次のようにプラークが残りやすい部分は念入りに磨きましょう。
- 歯と歯の間
- 歯と歯茎の境目
- 奥歯のかみ合わせ
また歯磨きの際に使う歯ブラシと歯磨き粉などのオーラルケアグッズも重要です。
歯ブラシには一般的に「やわらかめ・ふつう・かため」の3種類の硬さがありますが、硬ければ硬いほどしっかりと磨くことができます。
ただし硬い歯ブラシは歯や歯茎に負担をかけることもあるので、多くの人はふつうの硬さがちょうど良く、歯茎が弱っている場合にはやわらかめが良いとされます。
次に歯ブラシの形ですが、虫歯を予防するためには歯の汚れを落とすことが必要です。
そのため歯をしっかりと磨きやすい、毛先が平らになっているタイプの歯ブラシを選ぶことをオススメします。
そして歯ブラシは使い続けると毛先が広がり、歯を磨く力も徐々に低下してしまいます。
1ヶ月を目安に交換するようにしましょう。
一方で歯磨き粉に関しては"フッ素"が配合されているものを選ぶと、歯の表面のエナメル質を強くできるため虫歯予防に役立ちます。
これらに加えて糸ようじや歯間ブラシを使うと、歯と歯の間のプラークもしっかり取り除けるためより効率的に虫歯を予防することができます。
こうしたオーラルケアグッズはスーパーやドラッグストアなどで簡単に手に入れることができますが、近年では通販による海外製品など選択肢の幅も広がりました。
国内品と海外製品には使用されている成分の種類・配合量などの違いがあり、海外製品の方が高い効果を期待できる場合もあります。
海外製品の中には歯磨き粉・歯ブラシ・歯間ブラシが1セットになった「WhiteGlo アンチプラーク」などの商品もあるので、興味がある方はぜひお試し下さい。
食生活
食生活に気をつけることも、虫歯予防の1つです。
虫歯を予防するにはだ液をたくさん出すために、よく噛むようにしましょう。
先に説明したように虫歯はミュータンス菌が酸を作り出し、歯を溶かすことで出来てしまいます。
だ液は酸と反対の性質を持つアルカリ性なので、口の中を中性にして歯を守ってくれるのです。
さらにだ液は歯の表面の汚れを洗い流す働きもするので、虫歯予防には重要です。
またお菓子やジュースなど、1日の中で間食をする時には食べ方に気をつけましょう。
ミュータンス菌は糖分を栄養にして酸を作り出すので、間食を何度も繰り返していると口の中で酸を作り続けることになってしまいます。
そのため間食をする時には時間や回数を決めることがオススメです。
ただし糖分が虫歯の原因になるといっても、甘いものが全て良くない訳ではありません。
ガムなどによく含まれているキシリトールは甘味料の1種ですが、次のような特徴があります。
- 歯をとかすほどの酸が作られない
- だ液の分泌を増やす
- 歯の再石灰化(溶けた歯の修復)を促す
つまりキシリトールは虫歯の原因にならず、むしろ予防する甘味料なのです。
このような特徴は他の甘味料にはなく、キシリトール独自のものであると言われています。
虫歯の原因
意外なことに、虫歯は感染症の一種です。
原因は"ミュータンス菌"という細菌で、だ液を通じて人から人へと感染します。
そのため例えば同じスプーンを使うなど「食器の使い回し」も感染経路となり、ほとんどの人は幼児期にミュータンス菌に感染してしまっていると言われます。
しかしミュータンス菌に感染しただけでは虫歯にならず、「虫歯を引き起こす生活習慣」が重なった時に初めて虫歯はできてしまいます。
お菓子やジュースに含まれる糖分はミュータンス菌の好物となり、これを栄養源として増殖します。
ミュータンス菌が増殖する時には"グルカン(ノリのような物質)"を分泌し、歯にはミュータンス菌の集合体がくっつくことになります。
こうしたミュータンス菌の塊が"プラーク(歯垢)"と呼ばれる物質です。
またミュータンス菌には乳酸を作り出す働きもあり、プラークの中は酸性になってしまいます。
するとプラークがくっついていた歯は酸によって溶かされ、穴が空くことで虫歯ができてしまうのです。
ちなみに歯が溶かされる現象は"脱灰"と呼ばれます。
糖分をエサに、ミュータンス菌が増殖
↓
歯にたくさんのミュータンス菌がくっついてプラークとなる
↓
プラークから酸が作られ、歯が溶ける(虫歯)
つまり虫歯の原因は、大きく3つの要素に分かれます。
- ミュータンス菌(虫歯菌)
- 糖分
- 歯の質
ミュータンス菌に感染し、さらに甘い物の食べすぎや歯の磨き残しなどが重なると虫歯ができてしまいます。
このことから虫歯には感染症と生活習慣病という、2つの側面があると言えます。